レポート

前例のない設計条件に対応する
 兵庫耐震工学研究センターE-ディフェンス

先端科学技術施設、流通施設、工場などの建築では、一般的なビル建築と異なり、厳密で前例の少ない設計条件をいかに解決するかが構造設計のテーマとなります。場合によっては機械装置に要求されるような、ミクロン単位の条件に対して構造設計者として答えを出さなくてはなりません。私たちは蓄積された技術を応用し、新しいアイディアを付加することで、機能性が高くローコストな建物を実現させています。
ここでは、阪神淡路大震災を契機とした地震災害に強い社会を目指すという基本理念のもとに、実物大の建物が壊れる過程を三次元震動台での破壊実験によって科学的に分析することを目的に建設された実験施設の設計についてご紹介します。


破壊を科学的に分析する施設

E-ディフェンスは震動台という装置を使って建物の耐震性能に関する実験を行う研究施設です。“E”はEarth(地球)を表します。震動台とは、テーブルに載せた試験体を加振機によってあたかも本当の地震が発生したときのように揺らすことができる装置で、E-ディフェンスにおける震動台は最大1,200トンもの試験体を水平にも上下にも揺らすことができるだけでなく、長周期地震動を再現して建物の耐震性を検証できる世界最大の試験装置です。
耐震の研究を行う施設には一般の建物のようなプロトタイプはありません。施設が完成したのちに企画される様々な実験の試験体製作・運搬・実験・計測を確実に行える施設を目指して、数多くの提案を行いました。


巨大で頑丈な基礎の構築

機械装置である震動台を確実に稼働させるためには、震動台を格納している基礎がとても重要です。試験体とそれを載せているテーブルはあわせて2,000トンもの重量となり、これを1/20秒の精度で正確に揺らすためには非常に剛強な基礎が必要となります。また、このような大きな力を発生させると、この揺れが地盤を伝達して近隣の地域全体に振動が発生してしまうという可能性もあるので慎重な検討が必要です。E-ディフェンスでは、約9万立方メートルのコンクリートを使用した約20万トンの巨大な基礎を計画し、この基礎を敷地の中で谷となっている位置に建設することで、基礎と岩盤が一体となって働き、近隣での振動を抑えることができるようにしました。また、設計段階で現地にコンクリートプラントを建設して高品質のコンクリートを用いることや施工手順についても施工者とともに検討することで、ひび割れがまったくない頑丈な基礎を構築しました。E-ディフェンスは震動台・基礎がその性能を十分に発揮し、耐震技術の向上に役立っています。


科学技術の進歩にも役立つ構造設計

ここでご紹介したE-ディフェンスだけでなく、ノーベル賞で有名になったスーパーカミオカンデなどの先端科学技術関連施設は私たちの得意とする分野です。他にも、半導体製造工場の振動スペックをはじめ、様々な厳しい設計条件を経験し技術的解決を提案してきました。E-ディフェンスは豊富な経験に裏打ちされた技術の粋を極めた作品で、構造設計が科学の進歩に役立っている例と言えます。

吉澤幹夫・山野祐司・深井悟

▲断面構造図

▲E-ディフェンス空撮

▲実大6層鉄筋コンクリート造建物の震動台実験(2006年1月・文部科学省『大都市大震災軽減化特別プロジェクト』)

▲スーパーカミオカンデは地下1,000mの天文台。
光電子増倍管もステンレス製の構造体に支えられている。

独立行政法人防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター “E - ディフェンス”
建築主 : 独立行政法人 防災科学技術研究所 所在地 : 兵庫県三木市
建物種別 : 研究施設 構造 : 鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
階数 : 地上2階、地下1階 延べ面積 : 16,642.90㎡
竣工 : 2004年3月

*出典は構造デザインの最前線 日建設計 2008年4月— FACT-NIKKEN SEKKEI こちら

(II-G-001)/(O-S-001)
             
¶:写真撮影 兵庫耐震工学研究センター提供/東京大学提供

東京大学宇宙線研究所 スーパーカミオカンデ
建築主 : 東京大学 所在地 : 岐阜県吉城郡神岡町
建物種別 : 研究施設 竣工 : 1996年3月 

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