Amity with Environment 2006 From Town to Building March, 2006
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ライフサイクルを通じて「環境親和型建築」を実現することが大切時間領域を拡大して建築を考えることが必要と考えます。「環境親和型建築」の実現にはライフサイクルを通じてのフォローアップが大切です。現状では設計理念を反映した形で建物の運営がなされているとは言えない状況も見受けます。ライフサイクルを通じて「環境親和型建築」を実現するには、次のようなPDCA(Plan Do Check and Action)サイクルの適用が必要と考えます。第一は企画段階で、「環境親和型建築」に係わる定義と実現目標値を明示することです。第二は設計段階で、実現すべき目標値が達成できるか否かを検証することです。また、その成果を設計図に反映させることです。第三は施工段階で、納入設置される機器などの性能が前述の目標値を達成できるかを検証することです。また、目標性能を達成できるよう的確な試運転調整を行うことです。第四は運転段階で、年間を通じて、目標とした性能が達成されているかを確認することです。必要に応じて修正を加えます。環境・エネルギーマネージメントの充実が大切です。「環境親和型建築」・「環境親和型街区」等の実現には、環境・エネルギーに係わるマネージメントの充実が不可欠です。特に次の二種類のマネージメント手法が重要と考えます。第一はエリア環境・エネルギーマネージメント(AEEM:AreaEnvironment & Energy Management)です。残念ながら、これまでの地域開発では新開発であれ、再開発であれ、エリアというスケールでの環境・エネルギーに対する具体的なマネージメントスキームが明確にはなっていなかったきらいがあります。これからは、新規開発・再開発の街づくりだけでなく、既存市街地の環境負荷の低減を目指したマネージメントシステムの確立・展開が重要と考えます。第二はライフサイクル環境・エネルギーマネージメント(LCEEM:Life Cycle Environment & Energy Management)の概念です。前項に示したように建築のライフサイクルに沿って、企画段階での目標設定、設計段階や施工段階での目標達成見込み検証、運用段階での目標達成状況の確認を不断なく展開することが必要です。都市再生・建築再生等にあっては、管理指標・管理項目の明確化とそれに沿う具体的展開が特に重要と考えます。新技術の開発・導入も一つの柱環境負荷の主因となる化石エネルギー消費の殆どは、空調・照明などの設備システムや機器の運転を通じて行われます。これらに対する技術開発・導入が不可避と考えます。第一は建築におけるブレークスルーです。高断熱化・高気密化・日射遮蔽の強化など冷暖房負荷を低減するための素材やシステム技術の開発です。また、自然通風や自然光導入による空調や照明負荷を低減するための技術の展開も重要です。第二は設備システムのブレークスルーです。自然と人工とのハイブリッドシステムの開発・適用がクローズアップされるべきです。室内を均質な環境に維持しようとする現在の空調システムや照明システムも見直しが必要かも知れません。人がいる場所・時間だけを快適な環境に維持するパーソナル空調・照明も有力な省エネ手法と期待されます。第三は設備機器に関するブレークスルーです。設備機器の効率が倍になれば、化石エネルギー消費は1/2になるのが道理です。現在、差し迫った問題となっている環境負荷の低減策を中心に議論を展開して参りました。これらの考えを建築や街のデザインに昇華させることが重要です。たゆまぬチャレンジが必要と考えています。55環境親話2006まちから建築へ 日建設計―FACT-NIKKEN SEKKEI松繩 堅(まつなわ かたし)日建設計 常務執行役員 環境・エネルギー担当・経済産業省 資源エネルギー庁電気事業審議会 電力負荷平準化証委員会委員・国土交通省 社会資本整備審議会専門委員・空気調和衛生工学会 コミッショニング委員会委員長・非常勤講師(環境共生設計論)早稲田大学大学院、横浜国立大学大学院、東京工業大学大学院

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