New Horizons in Structural Design April, 2008
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34FACT NIKKEN SEKKEI    構造デザインの最前線伝統建築の歴史的価値と耐震性能の調和私たちは長年にわたって培ってきた耐震設計技術を、新築建物の設計だけでなく既存建物の耐震診断・耐震補強などに活かし、多くの実績を上げてきました。ここでは、近代の名建築や、伝統木造の社寺建築の保存・耐震補強例についてご紹介します。文化財としての価値を守りつつ耐震性を重視愛知県庁本庁舎は、近接する名古屋城との意匠の調和を図った代表的な帝冠様式の建物です。登録有形文化財でありながら現役の庁舎として機能し、災害時の防災拠点施設としても位置づけられています。そのため東海・東南海地震といった巨大地震への対策として、文化財建物としての保存を考えるだけでなく、高い耐震性を付与した免震建物とすることがまず第一の方針となりました。Historical Design and Seismic Reinforcement: Maintaining a Balance私たちはこれまでにも1990年代後半から立教大学礼拝堂や国際子ども図書館など、わが国における免震補強の黎明期からの技術発展に貢献してきましたが、その中でも愛知県庁本庁舎は、延床面積28,314㎡、地上6階・地下1階に及び、文化財建物の免震補強として、国内最大規模の改修工事となります。この計画では複数本の柱を集約してひとつの免震部材で支持することで、周期4秒という文化財建物の免震改修としては珍しい長周期化を図った点に特徴があります。日の字型に配置された基礎の大架構の上に上部構造をしっかりつくり、地震時にはゆっくりと安定した揺れ方になるよう設計することで、文化財的価値のある上部構造に全く手を加えることなく、巨大地震にも耐える建物としての改修を実現しています。Main Building of Aichi Prefectural Government and Goeido of Higashi Honganji Temple愛知県庁本庁舎&東本願寺 真宗本廟 御影堂

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