New Horizons in Structural Design April, 2008
5/52

構造デザインの最前線    FACT NIKKEN SEKKEI05この二つのタイプの地震が建物や都市に与える影響について整理してみましょう。「プレート境界地震」は、震源域が広く、地震規模もマグニチュード8クラスと大きいため被害が広域にわたり、複数の都市が同時に甚大な被害を受けることになります。また、このタイプの地震の揺れは長時間続くため、特に、平野部では、堆積層の影響によってゆらゆらと長い時間揺れる波(長周期地震動)が発生することが分かってきました。このような地震を受けると高層建物は大きく揺れるため、その特性を適正に把握して耐震安全性を確認することはもちろん、長時間の揺れに対する居住性や設備機器の機能維持などについても検討する必要があります。一方、「内陸直下地震」の場合、その規模は一般的にはマグニチュード7クラスで、ある限られた地域における被害は甚大となるものの、その範囲は局所的なものとなります。1995年の阪神淡路大震災においても神戸市三宮地区で震度7の揺れとなりました。このタイプの地震は震源域が小さく、揺れが発生する領域が限られているため、主要動の継続時間が短い、いわゆる直下型の揺れとなります。この場合、短時間で衝撃的な力が建物に作用することになり、特に、中低層建物の被害が大きくなると考えられています。プロジェクトごとに地震の揺れを見極める耐震安全性について検討する際の建物側の特性を示す指標として「固有周期」があります。固有周期とは、建物が右左と一往復揺れてもとの位置に戻ってくるまでに要する時間を言います。一般的に高層建物ほど固有周期は長く、高さ200m級の超高層ビルでは5秒程度になります。一方、地震の揺れにも様々な周期の波が含まれています。これは、音楽が低音から高音までの様々な音によって成り立っているのと同じで、地震の揺れも周期の短い領域でパワーが強いものや逆に長周期領域でパワーが強いものなど、それぞれ特徴があります。地震と建物の関係としては、地震のパワーの強い周期帯と建物の固有周期が一致すると“共振現象”を起こして建物が大きく揺れることになります。地震波の性質には敷地地盤も影響を与えるので、設計時には地震と地盤の条件を適切に考慮して建物の揺れ方を把握する必要があります。Global distribution of earthquakesEarthquakes frequently occur around the boundaries at which plates abut each other.世界の地震分布プレート同士の境界付近に地震が集中している(出典:気象庁ホームページ)Based on a Japan Meteorogical Agency website map

元のページ 

page 5

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です