New Horizons in Structural Design April, 2008
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構造デザインの最前線    FACT NIKKEN SEKKEI07低層建物の設計では、基本的に建築基準法で規定された地震力を用いるのに対し、固有周期の長い高層建物や免震建物については、地震による揺れの検証を慎重に行う必要があることから、実際の地震波を用いた解析を行う必要があります。こうした建物は前述したように「プレート境界地震」によって発生する長周期地震動の影響を受けやすいため、設計時には建設敷地に近い「プレート境界地震」を想定して地面の揺れを求めます。例えば、首都圏であれば関東地震、関西圏であれば南海地震や東南海地震によって建物がどのように揺れるかをコンピュータでシミュレートします。また、必要に応じて「内陸直下地震」のデータも採用しますが、その採否は、建物の重要度なども考慮した上、プロジェクトごとに判断します。設計用入力地震動システムの導入耐震性能の検討にあたって設計者が行うべきことは、まず、見込むべき地震を選定し、地域ごとに異なる地盤条件も適切に反映して地震の揺れを評価することです。そして、得られた地震の揺れを用いてシミュレーションを行い、建物ごと個別に耐震安全性を検証する必要があります。以上のような理念を実現するため、私たちは数年間かけて設計用入力地震動システムを開発しました。このシステムでは、前述したような様々な条件における地震の揺れを簡便に算定することができるため、数多くの設計案件における耐震性能をプロジェクトごと個別に説明することが可能となり、耐震性能に関する性能設計を推進することができます。また、このシステムは新築建物に適用できるだけでなく、既存建物の耐震診断・耐震改修にも活用できるものと期待されます。もちろん難解な自然現象についてすべてのことがわかっているわけではありません。私たちは設計時に想定した建物の特性やシミュレーションの結果を検証する目的で自社ビルに地震計を設置し、観測記録を分析することにより、建物の固有周期やシミュレーションに用いた解析モデルの妥当性などを確認しました。今後もデータを蓄積して地震と建物の関係をより明確にするとともに、得られた知見を反映してより安全・安心な建物を社会に提供していこうと考えています。 小堀徹・山根尚志地震の揺れ方と建物の揺れ方How a building sways with different types of earthquake motion小刻みな揺れShort-period wavesゆっくりした揺れLong-period waves低い建物が揺れやすいLow-rise buildings are more likely to sway高い建物が揺れやすいHigh-rise buildings are more likely to sway神戸 Kobe内陸直下地震Inland epicentral earthquake苫小牧 Tomakomaiプレート境界地震(長周期地震動)Plate-boundary earthquake (long-period ground motion)「内陸直下地震」は、がたがたと小刻みに揺れ、高層建物に比べ、中低層建物に与える影響が大きくなります。「プレート境界地震(長周期地震動)」は、大きくゆらゆらと長い時間揺れ、高層建物の揺れ幅が大きくなります。Inland epicentral earthquakes have short-period waves and are more likely to damage intermediate-sized and low-rise buildings. Sway induced by plate-boundary earthquakes (long-period ground motion) persists for a longer period of time and high-rise buildings are more likely to sway.

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