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南海トラフ地震に関して、2015年12月17日、内閣府より「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」が発表されました。この報告では、南海トラフ地震による地表の揺れの推計、超高層建築物の揺れの評価、構造躯体への影響、室内家具への影響などの検証結果が記されています。これは最終結論的な位置づけではなく、また、現在検討が進められている首都直下地震についても今後報告があるとしています。 さらに、この発表を受けて国交省が2015年12月18日に「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策案について」を発表し、意見募集を行いました。この発表で対象としているのは以下の通りです。● 対象建物は超高層建築物と大臣認定を受けた免震建築物(以下、「超高層建築物等」と呼ぶ)。● 告示免震建物は対象ではない。● 対象地震は南海トラフ沿いの巨大地震。● 首都圏の超高層建物設計の際に影響が大きい相模トラフ沿いの巨大地震(南関東地震)は対象としていないが、この地震に対しても「十分に余裕のある設計を行うことが望ましい」としている。─今回発表された地震動波形(以下、「試案波」と呼ぶ)は、三大都市圏および静岡県の一部で設定されています。このうち、大阪、名古屋、静岡では地図上で3つの区域分けがなされ、区域ごとに異なる強さの地震動が設定されました(下図)。黒線はこれまで超高層建築物等の設計用地震動として要求されてきた告示波と呼ばれるものです。特定の周期帯では、主に海岸沿いで告示波の2倍程度の大きさのもっとも厳しい条件となる地震動(青色)が設定されています。東京では、緑色の区域のみ設定され、地震動の大きさは告示波以下となっています(対象が南海トラフ沿いの巨大地震であるため)。また、この4つの地域以外では、告示波を設計に用いていれば試案波による検討は省略することができます。 なお、この試案波は、従来の告示波と同様に、表層地盤による増幅を考慮したものではありません。そのため、表層地盤の増幅を考慮する必要がある場合には、試案波に対してさらに大きな入力地震動を考慮することになります(今回の発表では地盤増幅の考慮方法も合わせて提案されています)。─今回の試案は、今後の新築建物の性能評価の際に、大臣認定取得のための性能評価の手順を規定する業務方法書における検討項目として位置づけられ、今後はより詳細な構造検討が求められる予定です。 また、既存建物に対しては、試案波の大きさが設計の際に用いた入力地震動の大きさを上回るか否かの判定(スクリーニング)が求められており、その結果によって詳細な構造検討や補強・改修などが推奨されると考えられます。ただし現段階では「告示化しない」ことが明言されているため、その法的義務はないと考えられます。一方で、今回の対象地域にある超高層建築物等に対しては何らかの対応を実施することが望ましい旨が自治体より周知され、道義的責任が追及される可能性もあります。他方、共同住宅に対しては詳細検証や補強改修への国の支援制度も準備されることとなっています。─以上が最新の地震動に関する政府の動きですが、試案に対する募集意見を踏まえて今後修正を加えた形で発表がなされると思います。日建設計では、今後の政府発表を見据えつつ、プロジェクト関係者の皆様と相談させていただくなかで、社会とクライアントの目線に立って考え抜く設計者として、個別のプロジェクトごとの最適な提案を探っていきたいと考えています。The text below explains the Japanese government proposed measures (2015) for dealing with earthquakes. 大阪圏関東圏中京圏静岡圏00204060801001201401601802002202402602803001234567891000204060801001201401601802002202402602803001234567891000204060801001201401601802002202402602803001234周期|Period[s]地震動強さ|pSv[cm/s]周期|Period[s]地震動強さ|pSv[cm/s]周期|Period[s]地震動強さ|pSv[cm/s]周期|Period[s]地震動強さ|pSv[cm/s]5678910002040608010012014016018020022024026028030012345678910[ポイント解説]長周期地震動に関するトピックスTopics on Long-Period Ground Motion各地域の区域分けと擬似速度応答スペクトル(国土交通省資料[http://www.mlit.go.jp/common/001113880.pdf]をもとに作成)中溝大機日建設計 構造設計グループDaiki Nakamizo Structural Engineering Division, Nikken Sekkei212016 Spring 26

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