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山梨知彦|日建設計 設計部門 副統括Tomohiko Yamanashi | Deputy Head of Architecture Design Department, Nikken Sekkei適材適所2009年に竣工した「木材会館」は、そうした試みの先駆けです。ここでのポイントは、「適材適所」という考え方です。 適材適所というと、今では適切な人材を適切な任務につけるという意味で使われることが多いのですが、もともとは神社仏閣を木造で建設する場合に、木材を使用する箇所の力学的特性などを勘案し、適切な樹種の木材を使うことを意味した言葉です。 たとえば木材会館では、木材の手触りの良さや温まりにくい性質を活かして、手すりや窓台など人の手に触れやすい部分や太陽光を遮るルーバーとして木材を用いています。また、構造的視点からも、最上階は屋根のみを支えているわけですから、軽い木材を構造材として用いる合理性があります。 高価に思われる木材も、木材マーケット上に最も流通している尺貫法に則って製材された規格材を外装材と内装材、そして構造材にも用いることで、木材調達コストを抑えることに成功しました。 また、柔らかく加工しやすい木材の性質を活かすため、人間の100倍の速度で木材を加工する、コンピュータ制御の機械の導入を設計時から考慮したことで、建設費を抑えることにも成功しました。内装では、避難安全検証法や耐火設計といった技術を駆使し、ほとんどの木部材を不燃化加工することなく、かつ木構造を耐火構造とすることもなく、「適材適所」の徹底によってコストを抑制しながら、安全な建物を実現することができました。─木材の可能性木材会館の竣工から7年が経過し、今では木材の不燃技術や耐火構造化の検討が進み、理論上は超高層ビルですら木構造で設計することが可能となりました。 私たちは、何が何でも木造にしようとするのではなく、木材を使うべき「適材適所」を見極めたいと考えています。 適材適所の合理的な設計、つまり木材を使うことが最適と思われる場所にこそ木材を使った、経済的でありながら人々に愛され、社会には低炭素の環境建築として胸の張ることができる「木質建築」木材会館全景。最上階のホールは純粋な木造となっている。Full view of the Mokuzai Kaikan, showing the solid wood-structured hall on the top floor.Photography|pp.5–6:野田東徳[雁光舎]/Harunori Noda [Gankosha]|p.7:日建設計/Nikken Sekkei052016 Summer 27

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