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[ダイジェスト│Digest] NSRIフォーラム NSRI ForumThe NSRI Forum is an open forum hosted by Nikken Sekkei Research Institute, at which invited specialists discuss a wide range of topics.http://www.nikken-ri.com/forum/ [講師]中野恒明芝浦工業大学名誉教授アプル総合計画事務所代表取締役Speaker: Tsuneaki NakanoEmeritus Professor, Shibaura Institute of Technology; CEO, APL Associates Inc. [ファシリテーター]竹内直文日建設計 顧問Facilitator: Naofumi TakeuchiAdvisor, Nikken Sekkei半世紀前に始まる「都市デザイン」が目指して来たものは何であったのか。加えて、地方都市再生への期待、公共空間活用タクティカル・アーバニズムの展望について、中野氏の40余年にわたる実務経験と国内外行脚で見聞された都市の往時(ビフォー)・現在(アフター)を交えて語っていただきました。What was it, after all, that the “urban design” aspira-tions begun a half century ago were trying to accom-plish? And what can be expected regarding the revival of local cities and for the potential of tactical urbanism in utilizing public spaces? We asked Tsuneaki Nakano to speak to these questions from his 40 years of hands-on, professional experience and observations of the “before” and “after” conditions of cities in Japan and overseas. 第52回2017年8月28日52nd Meeting, August 28, 2017ポスト「近代都市計画」への展望Looking Ahead to Post “Modern City Planning”「都市デザイン」とは何であったか「住まう」「働く」「憩う」「交通」の機能を分解して拡散を誘導したのが「近代都市計画」です。いち早く導入した欧米諸都市は、1930年代以降、中心市街地の衰退を経験しました。それを克服するため1960年代から始まったのが、ポスト近代都市計画=「都市デザイン」の世界です。私はこれを、行き過ぎた自動車社会への反省とともに、用途分離から「秩序ある混合」への切り替えと解釈しています。歩行者中心社会への回帰と欧米の取り組みヨーロッパでは、土地利用分離政策の見直しや歩行者中心社会への回帰のため、歩行者空間整備などの交通計画だけでなく、街並みを保存するための住戸改修などさまざまな取り組みが行われました。当時注目された本がHMSO*1の『Study in Conservation』、そしてOECD*2による『Streets for People(楽しく歩ける街)』です。私はそこに出ている都市をことごとく巡り、そして再訪を重ねてきました。イギリス・チェスター(写真)はそのひとつです。 アメリカでも1960-70年代に、歩行者モールが約200カ所できました。しかし、現在は一部を除き、自動車通行が復活しつつあります。両者には、中世からのヒューマンスケールな街(ヨーロッパ)と馬車の時代につくられた街(アメリカ)という、歴史的経緯の違いがあります。地方のまち再生、「タクティカル・アーバニズム」へ日本では、1968年に新都市計画法が制定されてから50年が経ち、私のふるさともいつの間にか「元祖シャッター通り」と言われる街になってしまいました。地方の街が「近代都市計画」を導入してどう変わっていったのか、それが私にとって一番大きな課題でもありました。 地方中心市街の空洞化は往々にして地域産業の衰退問題として語られますが、その要因の多くは域内での人口移動によるものです。商店主自らが郊外の理想の住宅地へ転出する、多くの住民の方々がそれに追随する、これが空洞化の始まりです。街の再生で一番大事なのは、市民の意識を変えて「街に戻ろう」となること。それには戻りたいと思える居住のための都市環境を回復させる、それこそがまち再生の「都市デザイン」です。街なか居住を支える道路環境の改善とともに、豊かな公共オープンスペースの活用の道を開く。これが「タクティカル・アーバニズム」の運動です。 「都市デザイン」の世界が達成された街には、街なか居住が定着することで住民主体のにぎわいが復活し、幸せな光景が展開します。これが私の40年間の旅の結論です。チェスター(イギリス)の、1966年当時のザ・クロス周辺の自動車で溢れた街路の状況(左*3)と、2009年時点の同アングルの風景(右)の比較。多くの歩行者の集う場所に変身している。Compare Chester Cross in 1966, choked with automobiles (le) and the intersection in 2009 taken from the same angle (right). It is now a popular pedestrian gathering place.322017 WINTER33FORUM

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