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[ダイジェスト│Digest] NSRIフォーラム NSRI ForumThe NSRI Forum is an open forum hosted by Nikken Sekkei Research Institute, at which invited specialists discuss a wide range of topics.http://www.nikken-ri.com/forum/ [講師]木下 勇千葉大学教授Speaker: Isami KinoshitaProfessor, Chiba University山本俊哉明治大学教授Speaker: Toshiya YamamotoProfessor, Meiji University [ファシリテーター]羽鳥達也日建設計 設計部門 設計部長Facilitator: Tatsuya HatoriGeneral Manager, Architectural Design Department, Nikken Sekkei日建設計職員有志(ボランティア部)が東北被災地で支援活動をするなかで、現地の心配事に応えるために考案したのが「逃げ地図」です。「逃げ地図」ワークショップを日本各地で展開し、また自律的なワークショップ運営のためのマニュアル開発を日建設計と協働で取り組んでこられた、千葉大学の木下教授と明治大学の山本教授を講師にお招きし、災害に対する身近なリスクコミュニケーションの大切さを語っていただきました。To address concerns of residents in disaster areas, the Run and Escape Map was developed as part of Nikken Sekkei’s Volunteer activities to support the areas hit by the 2011 Tohoku Earthquake. The map workshops were held in various parts of Japan, with talks by pro-fessors Kinoshita and Yamamoto, who worked with Nikken Sekkei to develop a manual for self-directed workshops about communicating the necessity for dis-aster preparedness. 第55回2017年12月13日55th Meeting, December 13, 2017東北から日本各地に広まる「逃げ地図」の現場についてRun and Escape Maps: Spreading Fast from Tohoku to Other Parts of Japanリスクを可視化する「逃げ地図」は、浸水想定区域や避難経路を可視化して共有することで、災害への漠然とした不安を客観視し、新たな避難場所や復興計画の検討に役立つものです。大規模施設設計時の避難計画の考え方を応用して、開発されました。 後期高齢者の傾斜路歩行速度を毎分43mとして、避難目標地点までの経路を3分ごとに色分けします。緑のほうが安全で、赤から暗い色になると逃げ遅れるリスクが高いことを示し、危険な場所と逃げる方向を直感的に理解できる仕組みです。また、避難場所を増やすと経路の色が変わるなど、避難対策の見える化効果もあります。 きっかけは東日本大震災の津波災害でしたが、土砂災害や水害など、多様な災害に活用できることが分かっています。地域と世代をつなぐ「逃げ地図」は、地域の人たちがワークショップなどを通じて一緒に防災を考えることができる、リスクコミュニケーションのプラットフォームになることが最大の特長です。現在では、行政機関の研修や、学校での防災教育、地区防災計画の立案プロセスに組み込まれるなど、各地でさまざまな使われ方をしています。 逃げ地図作成を通した世代間・地域間の連携促進は、RISTEX*1の研究課題に採択され、「逃げ地図づくりマニュアル」*2を整備しました。社会実装には多様な担い手の確保が不可欠ですが、全国各地のNPOや学校、建築関係団体などが、マニュアルやこれまでの経験をもとに自律的に展開する環境ができつつあります。また、アメリカやタイ、インドネシアなど、国際的にもニーズが広がっています。明日からでも始められる防災堤防の建設など、災害に対するハードを整えるのはとても時間がかかります。しかし、どこにどう逃げれば命が助かるのか、地域のさまざまな世代の皆さんで「避難」というソフト面を考え続けていくことが、これからの自律的な地域防災にとても重要です。逃げ地図のように、色鉛筆や紐があれば誰でも試せるプラットフォームを利用して、災害に対する意識を保ち続けていただきたいと思います。*1 RISTEX:社会技術研究開発センター。国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の組織。*2 「逃げ地図づくりマニュアル」は、逃げ地図ウェブ(http://nigechizu.com)にて無料公開中。3691215182124min避難地点|Escape Point逃げ地図の作成例|Example of a Run and Escape Map182018 SPRING34FORUM

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