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[ダイジェスト│Digest] NSRIフォーラム NSRI ForumThe NSRI Forum is an open forum hosted by Nikken Sekkei Research Institute, at which invited specialists discuss a wide range of topics.http://www.nikken-ri.com/forum/ [講師]ヴァンソン藤井由実ビジネスコンサルタント(日仏異文化研修講師)Speaker: Yumi Vincent-FujiiBusiness Consultant (French-Japanese Intercultural Trainer) [ファシリテーター]児玉 健日建設計総合研究所 理事上席研究員Facilitator: Ken KodamaExecutive General Manager, Principal Consultant, Nikken Sekkei Research Institute次世代型路面電車(LRT)などの公共交通、中心部の公共空間を活用した総合的な施策により、都市のにぎわいを創出できることが、フランスなど欧州の都市で証明されています。『ストラスブールのまちづくり』(学芸出版社、2011、土木学会平成24年度出版文化賞受賞)、『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか』(共著、学芸出版社、2016)など、フランスのまちづくりに関する著作をもち、現地行政に数多くヒアリングされてきたヴァンソン藤井由実氏に、フランスの都市づくりについてご講演いただきました。European cities in France and elsewhere have proven that urban vitality can be created through comprehen-sive policies including public transportation, such as next-generation light-rail transit, and creative use of public spaces in city centers. Author of Sutorasuburu no machizukuri (Town Planning in Strasbourg; Gakugei Shuppan-Sha, 2011; winner of the 2012 Japan Society of Civil Engineers Publishing Culture Prize) and Furansu no chiho toshi ni wa naze shatta-dori ga nai no ka (Why Provincial Towns in France Don’t Have Shuttered Shops; co-author, Gakugei Shuppan-Sha, 2016), and known for her interviews and books on community building and city planning, Yumi Vincent-Fujii spoke about city planning in France. 第59回2018年4月16日59th Meeting, April 16, 2018モビリティ政策と都市空間の再編によるにぎわいの創出:フランスの挑戦Mobility Policy and Restructuring City Spaces to Create Active and Prosperous Cities: France Takes on a Challengeにぎわいを生み出す法制度歩行者優先のまちづくりを進めているフランスの広場は、平日もたくさんの人びとでにぎわいます。 これは、1982年の国内交通基本法制定以来、時間をかけてつくってきた都市計画マスタープランと交通マスタープラン、住宅供給計画が一体となった法制度の成果です。フランスでは、市町村道路や広場空間の管理は、コミューンと呼ばれる最小単位の自治体(あるいは広域自治体連合)に委ねられています。歩行者のための車両交通の制限や、都市空間の再配分などの施策は、この自治体に実施権限があります。また、日本では全国一律運用とされている建築基準法ですが、フランスでは各自治体が都市計画マスタープランの中で策定し、法定条例化されます。そして、自治体から選ばれたマスターアーバニスト(都市計画プランナー)を中心として、全体計画の詳細を決定し、個々の建築物もコントロールします。このように小さな単位に権限が委譲されることで、整合性のある整備開発が進み、地域の魅力がまちに表れ、にぎわいが維持されるのです。福祉として実現した交通の仕組み車社会のフランスで、市民はなぜまちなかの車利用を手放せたのでしょうか。それは、交通事故防止に対する市民の意識の高さ、駐車場空き情報の提供などや、パーク・アンド・ライド実現に向けた仕組みが分かりやすいデザインによって実現していることが理由として挙げられます。また、幼少期から徹底した環境教育を受けてきた40代以下の世代が、議会や行政で活躍しはじめたこと、そして、車のない(少ない)まちがすでに実現しており、きれいな空気やゆったりした空間など、まちにもたらされる価値が具体的にイメージできることも、この動きを加速させています。 まちなかの移動手段として、フレンチトラムと呼ばれる次世代型路面電車(LRT)が28都市で導入されています。徹底したバリアフリーや、他の公共交通機関との連携など、まちのトータルなモビリティに配慮されています。また車両には地域色あふれるデザインが施され、LRTが都市の顔となっています。 LRTほどの輸送量を必要としない都市では、高速連節バス(BRT)や路線バスを利用した歩行者優先のまちづくりが進められており、実に35の小都市で路線バスが無料です。フランスは交通を福祉と捉えており、健康、子育て、観光、市街地活性化、環境保全など多方に関係すると考えています。持続可能なまちづくりを公共交通が支え、自治体が公共交通を税金で支えることがフランスモデルです。アンジェ市内を走る次世代型路面電車。|Next-generation streetcar in Angers.Photography: Vincent-Fujii202018 AUTUMN36FORUM

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