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[ダイジェスト│Digest]NIKKEN FORUMFORUMThe Nikken Forum is an open forum hosted by Nikken Group, at which invited specialists discuss a wide range of topics.─ 第13回 2021年9月21日13th Meeting, September 21, 2021─Today, environmental performance influences real estate values. How will society change as we move closer to carbon neutrality? What should we strive to accomplish by 2050? What goals should we reach by 2030? We spoke with two experts who are on the front lines in addressing these questions, asking them to dis-cuss the integration of environmental performance into business strategy.ESG投資・サステナブルファイナンスの観点から毎年ダボス会議で公表される世界のトップ10リスクでは、近年トップ5を環境リスクが占めています。台風や洪水、熱波といった物理リスクと、政策や法規制といった移行リスクなど気候変動によって生じる財務リスクに注目が集まっています。このことを裏返して考えると、ZEB(Net Zero Energy Building)や災害に強いビルの価値が高まるチャンスとも言えます。 EUは、気候変動対策などグリーンな経済活動をタクソノミーとして定義し、これをサステナブルファイナンスで推進する戦略をとっています。一方、日本はTGIF、つまりトランジション(移行/Transition)を重視し、これとグリーン(Green)、イノベーション(Innovation)をファイナンス(Finance)で同時推進させ目標達成する戦略です。 脱炭素に向けて各国が厳しい政策をとる中、気候変動による財務リスクと機会の企業による開示(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)も義務化の動きがあります。また、投資家主導で移行リスクを定量評価するCRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)の取り組みも広がっています。 投資の世界はもともとのリスク・リターンの二軸から、気候変動、健康・快適性、地域社会・経済への寄与、災害対応、少子高齢化対応などの「社会的インパクト」という三軸目が求められるようになりつつあります。環境性能が低いものは売却価格が下がるブラウンディスカウントが既に始まっており、逆にZEBなど社会に対して正のインパクトをもたらす不動産が2050年に向けて求められています。[講師:堀江隆一]─カーボンニュートラルへの道我が国は、脱炭素社会の実現のため、2021年4月に「2030年までに温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)を2013年度比46%削減する」と表明しました。このためには、環境対策を超えた産業や社会構造の変革が必要です。我が国のGHGの85%は化石エネルギー起源なので、「徹底した省エネ」と「再生可能エネルギーの導入拡大」が目標達成の鍵を握っています。 2000m2を超える非住宅の年間着工棟数は全体の僅か0.6%ですが、エネルギー消費量は36%になります。ここの省エネが頑張りどころです。ZEH(Net Zero Energy House)はかなり普及しましたが、2019年度に竣工した5万棟を超える非住宅ではZEBは0.25%しかありません。コスト増のイメージを払拭する必要があります。 2030年までに導入が見込める再エネは主として太陽光発電です。国土面積当たりの設備容量で日本は世界一ですが、これをさらに増やすために、住宅を含む建築物の屋根への設置拡大が検討されています。 再エネのような変動型エネルギーを使いこなすためには、需要側の省エネや蓄電・蓄熱技術に加えて、供給側と連携した「あやつる」技術が必要です。これはデジタル技術の粋であり、世界について行く必要があります。また、カーボンニュートラルではSDGsの精神である、誰もが幸せに暮らせる変革が求められています。[講師:田辺新一]2050年に日本の不動産はどう生き残るのかHow Will Japanese Real Estate Stand in 2050? [講師]堀江隆一CSRデザイン環境投資顧問代表取締役社長Speaker: Ryuichi HorieCo-Founder & CEO, CSR Design Green Investment Advisory Co., Ltd. [ファシリテーター]堀川 晋日建設計 エンジニアリング部門統括Facilitator: Susumu HorikawaHead of Engineering Department, Nikken Sekkei環境性能が不動産の価値を左右する時代を迎えました。2050年のカーボンニュートラルに向けて社会はどのように変化していくのか、我々は何を目指せば良いのか、そして2030年までにやるべきことは何か。環境性能をいかにビジネス戦略に組み込むかをテーマとし、最前線で活躍されている二人の講師にお話しいただきました。 [講師]田辺新一早稲田大学理工学術院 創造理工学部建築学科教授、日本建築学会会長Speaker: Shin-ichi TanabeProfessor, Ph.D, Faculty of Science and Engineering Department of Architecture, Waseda University;President, Architectural Institute of Japan362021 WINTER49FORUM

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