Public Space(抜粋版)
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るThe London Planがうまくいった理由ではないかと思います。また、オリンピックのレガシーと言われるものには、直接レガシーと間接レガシーがあります。直接レガシーはオリンピックに直接的に必要なスペースとしてのパブリックスペースであって、古典的なオリンピックの空間づくり。そうではなくて、間接的なものに価値を見出したのがバルセロナではないかと思います。オリンピックパークやスタジアム周辺はオリンピックまでは注目を浴びるが、オリンピックが終わった後にどれだけメディア発信力があるかというと意外にない。しかし日常空間は長期間にわたって発信し続ける可能性を持っている。そこに、社会的意義や経済効果もすごくあると価値を見出したのがバルセロナの到達点のような気がします。きちんとデータが取られているかはわかりませんが、不動産広告の打ち出し方などを見ると、ロンドンの地理的な空間の価値は大きく変わったと受け止められているように思います。オリンピック以前は売りにする場所といえばロンドン西部でしたが、今では、ショーディッチなどの東部はクリエイティブな場所であり、ロンドンの最先端がここにあるといった宣伝を多く目にします。そのような広告を見るようになったのはオリンピック以降のことです。ロンドン東部をクリエイティブな場所にするという戦略は、非常に意図的に行われてきたことでもあります。英国は2000年頃からクリエイティブ産業に力を入れるという政策を進めてきました。ここには元々そのような素地があったわけではなく、むしろ空きオフィスが集積していたことに地区行政は頭を悩ませていました。そのような中オリンピックが開催されることになり、ロンドン東部をクリエイティブ産業の核にしていくという流れが生まれました。また、ロンドン東部では古い倉庫が改装されてシェアオフィスなどができて、その前面空地みたいなところに感度の高い人が集まってきて、カフェができたり店舗の外にちょっとした家具が出てきたりして、この地域の雰囲気を大きく変えていきました。このような動きを行政としては大きな視点から見ていますが、実際の空間はボトムアップ的に形成されてきたととらえることができると思います。ユーザーが空間の構築に積極的に関与してきたことが、この5年間で急速に街が変化した要因かもしれません。このように、行政・事業者・ユーザーの3者が常に等価である必要はなく、空間づくりの主導権が状況に応じて変化していくという考え方-- ロンドンではオリンピックをきっかけにパブリックスペースが再生されたことに対して、どのような評価がなされているのでしょうか。12

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