IDEAS

LIFE 01

津波から生き延びるための
「逃げ地図」。

「逃げ地図」は、地域の避難方法を可視化するツール。
自分たちで安心を獲得するアイデアを共有し
日常の安全を高める意識につながります。

安心して住まうこと、とは何でしょうか? 東日本大震災以降、人々が再認識したのは、日常生活を突然襲う災害から自分たちで自分たちを守ることの大切さです。また、「いかに逃げるか」ということの重要性が強く認識され、災害を他人事ではなく「自分ゴト」として捉えていこうとする意識が一般市民へと広がりました。

「逃げ地図」と呼ばれる地図の記述方法があります。日建設計有志により開発された避難時間を地図上に可視化する方法です。建築を設計する際には、災害時、短時間で避難が完了するように設計をします。この考え方をまちや都市レベルに展開したものです。

高台の避難場所までの到達時間を高齢者の歩行速度(43m/分)で換算し、地図を色分けします。まず、地図の縮尺に合わせて距離を測る紐を作り、それを使って、高齢者が避難場所まで3分以内で逃げられる道を色鉛筆で塗ります。

同様に、3〜6分、6〜9分、9〜12分、12〜15分で逃げられる道を白地図上で塗り分けます。簡単な道具を使って、誰でも実践できる方法です。このような方法で、どの道をどう辿れば、より早く安全な避難場所に到達できるかが「見える化」されていきます。

「逃げ地図」は、住民の皆さんと一緒につくっていくもので、これまで各地でワークショップが開催されました。手法の分かりやすさと、簡便な道具のおかげで、集まった地域の方々の主体的な参加を促すことができるため、地域を熟知した住民だけが知っている白地図上には表れない情報も引き出すことが可能です。また、塗り分けられた地図を前に、住民の皆さんから、「この道とこの道を路地でつなげば今より数分早くできる」「従来の避難場所までが遠いので途中に高い避難タワーを設置して避難時間をさらに短縮しよう」など、避難場所への到達時間を短縮するアイデアが積極的に出てきます。地域住民自身による安心/安全なまちづくりを検討する道具として、「逃げ地図」が役立っています。

町をよく知っている住民ひとりひとりの身体感覚が伴った「避難計画」が出来ていけば、「逃げ地図」の手法と実践は地域の安全性向上につながります。

「逃げ地図」は、今、被災地のみならず、全国に広がっています。全国各地から私たちも作りたい、ワークショップを開催してほしいとの声が聞こえてきます。鎌倉の中学校の地域活動として、また金沢や和歌山でもワークショップが開かれ、さらに地図や防災の専門家からも注目されています。「逃げ地図」活動は「命をまもるまちづくり」の視点から、さらに日本各地へと広がり続けています。

*この「逃げ地図」活動は、日建設計ボランティア部で運営されています。