IDEAS

LIFE 02

オフィス街で森林浴?!

都心にいながらいつでも豊かな緑を満喫できる、
そんな新しいライフスタイルを提案した
「新ダイビル・堂島の杜」を紹介します。

かつてはコンクリートジャングルと呼ばれた都心。そこで働くオフィスワーカーにとって、これまで“自然”は非日常的なもの、休日にリゾートなどへ出かけて接するものでした。ところが、近ごろビジネス街にいながらにして緑を満喫できるパブリックスペースが、少しずつ増えてきました。急激な都市開発によって失われた緑を、再び都心に取り戻そうという動きが生まれています。

2015年、緑の少ない大阪の堂島エリアに約1,000坪の広大な“森”が出現! 「新ダイビル 堂島の杜」です。ビルの建て替えにともない、敷地の約半分を緑地化。高層ビルの足元に、約80種300本の多様な木々が生い茂る“都市のオアシス”を創出しました。

実は建て替え前の旧ビル屋上には、1964年に竣工した、知る人ぞ知る広大な樹苑がありました。大規模屋上緑化の先駆けとして、半世紀にわたり、生態系に配慮した貴重な緑地が維持されてきたのです。先人がこの屋上樹苑に込めた想いやスケールを受け継ぎ、もっと地域の人々に親しまれるようにと、地上に再現したのが「新ダイビル 堂島の杜」というわけです。

新たな緑地空間の大きな特徴は、屋上樹苑の樹木の一部が移植されたことです。まさにこの場所で育まれてきた樹齢約50年の緑を継承するのは、地域を愛する精神を伝えるためにも意義深いこと。ランドスケープデザインを手がけた日建設計はクライアントとの深い議論を経てそう考えました。しかしその実現には、さまざまな苦労がありました。

まず屋上樹苑を調査し、高さ12mにまで育ったケヤキをはじめ、イロハモミジ、ツバキ、クスノキなど約20本の移植対象木を選定。根回し、根巻を行いました。屋上樹苑は土の厚みが平均わずか36cmほどしかありません。ゆえに樹木の多くが、下ではなく横にどんどん根を張りながら育っていました。根鉢が平たいため、縄を使う通常の根巻ではなく、ストレッチフィルムと単管挟み込みでしっかり補強したうえ、根鉢を掘り取る必要がありました。

4t以上の樹木は200tクレーンで屋上から下ろすなど、大がかりな搬出作業を経て、仮植地に移植。根系を残した本植(再移植)をしやすくするため、盛り土をした高植え状態で、ビルの建て替えをしている約4年間養生しました。根が乾燥しないよう麻布の内側に水で濡らしたミズゴケを差し込むといった養生技術を駆使。そのかいあって、十分な根系と緑量を保ったまま、歴史ある樹木を新築ビルの周りに無事、本植することができたのです。

地下に駐車場があるため、人工地盤上につくられた「新ダイビル 堂島の杜」。あえて地表に起伏をつける、遊歩道を蛇行させる、樹木をランダムに植えるといった工夫を凝らし、人工地盤をまったく感じさせない自然な森らしさを演出。月1回の定期メンテナンスでも、画一的な剪定や過剰な病虫害対策はしません。できるだけ自然な状態を生かす“順応的管理”により、ますます元気を増している森。人だけでなく生き物にも心地よい空間となっています。

蝶が舞い、小鳥がさえずる緑豊かな森で、思い思いにくつろぎ、仕事の疲れを癒しているオフィスワーカーたち。毎月第2土曜日にはグリーンマーケットが開かれるなど、森は休日の交流の場としても親しまれる存在になっています。またビルのエントランスロビーでは、クラシックコンサートなどを開催。全面ガラス張りで、森に包まれているかのようなこの空間も、地域に開かれたパブリックスペースとして、さまざまに利用され始めています。
都市生活者の日常にメリハリと活力を与えてくれる、こうした緑をもっと都心に創出したい。日建設計は、これからも都市緑化を推進していきます。

写真
上から2枚目、4枚目:河合止揚
3枚目:東出清彦
5枚目:ダイビル株式会社提供