IDEAS

SOCIETY 03

建築の情報を社会にひらく時代へ
「ビンフォメーション(B.Information)」の整備

日建設計のデジタルデザインラボ(DDL)は、
誰もが活用できる建築情報のプラットフォームを開発しています。

”建築を立体的にとらえるメリット"

日本の建設業界では2009 年頃から、設計や施工などのプロセスのなかでコンピュータを積極的に活用する「ビルディング インフォメーション モデリング(BIM)」が始まり、その流れが加速しています。
それまでは図面という平面の世界でしか建築をとらえることができず、見る人によって理解度も異なるためコミュニケーションに齟齬(そご)が生じることもありました。これを立体的にとらえることができると、例えば、スタジアムの全客席からの視線、複雑なかたちをした建物に当たる太陽光や風がどこに向かうかなど、あらゆることをシミュレーションして関係者と視覚的に共有できるようになります。
従来、設計時には、建物をシンプルなモデルに置き換えて、様々な検討を行ってきましたが、可能な限り、細かい情報をそぎ落とさずに高解像度で建築をとらえた方が理想的と言えます。ビル風の発生など起こり得る課題を事前に検証し、デザインを調整しておけば、建てた後で「こうしておけばよかった」という後悔をできる限り減らせるからです。

日建設計のDDLでは、「建築とテクノロジーのかけ算によって生み出す新しい価値」をテーマに、実際のプロジェクトのなかでコンピュータを活用しながら、建築にまつわるあらゆることを、より現実に近い形でシミュレーションできるように研究開発を進めています。

”建物を相対的に評価したい”

DDLが特に力を入れて進めているのが「ビンフォメーション(B.Information)」の整備です。冒頭の BIMは主に建築のプロセスに注目した方法ですが、B.Informationは建築にまつわる情報全般をデジタル化するもので、不動産や通信、エネルギーなど建設以外の業界の人たちもそれを有効活用できるような建築の情報プラットフォームを目指しています。

今は世の中のあらゆる情報が明るみになる時代ですが、建築は必ずしも公共のものではないため情報がブラックボックス化されがちで、現状は建物の高さが何メートルであるか簡単に知ることもできません。しかし建築の情報がオープン化され、これまで「個」として扱われてきた建物を「群」として見られるようになれば、建物同士の関連性や、それを取り巻く人の動きや環境などを相対的に評価できるはずです。すると、例えばヒートアイランド化が叫ばれる都市部においても、広い地域に対して画一的な対策を施すのではなく、特定のエリアにのみ緑化や規制をかけるといったことが可能になるかもしれません。

このように世の中には、建築の情報が求められている場面がたくさんあるのではないか——。 B.Informationをよりひらかれたプラットフォームにするため、どのような業界の人がどのような情報を欲しているかをディスカッションしながら、それを可視化するための技術を開発しているところです。

”社内向けと社外向けの両輪で”

建築にまつわる情報にはどういった価値があるのでしょうか。そのヒントは、日建グループのなかにあります。日建グループでは、約1,500 人の専門家が世界中で数多くの建築を設計しています。通常、建築のプロジェクトは一品生産のように毎回ゼロからスタートするものです。しかし、過去の膨大なプロジェクトの経験を統合化・ナレッジ化できれば、初期段階から高精度にコストを試算したり、より高い品質の建築を効率的に社会に提供していくことが可能になるはずです。

日建グループ社内のプロジェクトにおけるナレッジ活用の基盤と、建物ができた後に建物に関する基礎的な情報を使いたい人が誰でも活用できる社会基盤の両輪で、B.Information の開発は進んでいます。建築の情報が社会にひらかれた時、世界や街の見え方が大きく変わるかもしれません。今後の展開にどうぞご期待下さい。