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HIGHLIGHTS

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日東電工株式会社:inovas(イノヴァス)

お客様と設計チームが一緒につくるイノベーティブ空間

設計部 本田聡一郎、 NAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab) 塩浦政也

2016年3月、日東電工株式会社様(以下Nitto)の新たなイノベーション拠点「inovas(イノヴァス)」が大阪府茨木市にオープンした。従来の研究施設とは一線を画す、まるで「おもちゃ箱をひっくり返したような楽しい空間」が特徴だ。
この空間はどのようにして生まれたのか。設計を担当した本田聡一郎と、イノベーションのためのアクティビティデザインを担当したNAD(NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab)の塩浦政也に話を聞いた。

ワークショップでNittoらしさを可視化する

「本当の意味でイノベーションが起きる空間をつくりたい」このプロジェクトは、そんなクライアントの想いからスタートしました。
そこで私たちは、選抜されたNitto社員約30名の皆さんとワークショップを通じて一緒に考えるというプロセスを提案し、実施しました。

ワークショップでNittoの皆さんと最初に行ったのは「観察」です。
東京の「TSUTAYA書店」や「武蔵野プレイス」など、新たな発想でできている空間で疑似空間体験ツアーを行い、まずは視野を広げていきました。
その上で、自分達のオフィスでおこる出来事を「写真日記」として1日1枚写真に撮ってもらい、日常の観察を行いました。
集まった写真を壁一面に貼り、それぞれについて発表してもらいます。例えば実験室の端にある冷凍庫の上にラップトップを置いて突発的にワイワイガヤガヤと会議を行っているようなNittoならではのシーンを確認していくのですが、たくさんのシーンを同時に見ることで、次第にこうしたシーンには共通点があることが見えてきました。
そして「Nittoらしさ」についての「洞察」を深めていきました。「必ずしも決められたとおりに空間を使わず自分たちでカスタマイズする」「決められた場所以外での突発的なコミュニケーションの衝突回数を上げることで多くのアイデアが生まれる」、そんなことがわかってくるわけです。そこから、「出会う」「話し合う」「協働する」「こもる」「やってみる」「魅せる」「もてなす」という「7つの働き方」を導き出しました。
次に「7つの働き方」をもとに、簡単な家具のモックアップを木や段ボールを使って実際に作成します。例えば「お風呂に入ると新しい考えが思いつくよね」という意見を生かして、「お風呂型ソファ」という話し合うための家具を形にします。さらに、それらのモックアップを使って働いているシーンを皆さんに演じてもらいます。

こうした一連のワークショップを経て、私たちは、Nittoらしいイノベーティブなワークスタイルやワークプレイスが何であるかということを社員の皆さんと一緒に可視化していきました。

全員が能動的に参加する空間

その結果、「inovas」は他にはないNittoらしい空間として出来上がりました。
例えば執務スペースは、建物の内側に配置され、窓に隣接していません。その替わりに、執務スペースの周りに配置されている廊下は自然光溢れる気持ちの良い空間になっています。これは一般的なオフィスとは逆の配置ですが、これまでNittoの執務スペースがブラインドを下げた状態で使用されてきたことをワークショップで確認した結果、窓はいらないという結論になったのです。
そのおかげで自然光の恩恵を受けることになった廊下には、小さいけれどバラエティに富んだ「7つの働き方」を起こすミュニケーション空間をちりばめました。ワークショップから発想を得た新たなアイデアや議論が生まれる仕掛けをそこにつくったのです。この廊下は「偉大なる廊下」と名づけられ、イノベーションの生まれる重要な場として位置付けられています。
私たちは、イノベーションを生むための仕掛けは、空間だけではなく、社員の皆さんと一緒につくりあげるプロセスにもあると考えています。もしこの空間がトップダウンや数人の担当者だけで決まっていたら、一般社員の皆さんは、能動的に参加する機会もなく、とまどいの方が大きかったかもしれません。でも、ワークショップに参加された皆さんにとっては、この空間は、すでに他人事ではなく、自分事になっていることでしょう。この方たちが中心となってこの場を使いこなしていくことで、100周年を迎えるNittoの新しい時代につながるイノベーションが生みだされていくことを信じています。