Project Management in FocusApril, 2007
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10FACT NIKKEN SEKKEI    プロジェクトマネジメントの現場 日建設計文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント真宗大谷派(東本願寺)本山の多くの伽藍の中でも、その象徴といえる御影堂(ごえいどう)の修復が行われています。現在の建物は、1602年にこの地に境内を定めて以来4度の焼失を経て、1895年(明治28年)に再建された世界最大級の木造建造物です。当時の建設責任者であった棟梁・伊藤平左衛門は設計者であると同時に施工者であり、プロジェクト運営の全体指揮を務める当時のプロジェクトマネジャーでもありました。この優れた先達の偉業を、遠い未来に向けて健全に残していくために2008年末の竣工を目指して修復を行っています。 修復ブラックボックスの扉を開ける従来、文化財の修復は官公庁や特定の文化財を専門とする設計監理団体によって実施されてきました。日建設計のような総合設計事務所がこのような修復を行うことはおそらく初めてのケースです。文化財の修復には種々の未解決部分が残されており、現代の先端技術を必要とする余地が極めて多くあります。社会環境の変化やプロジェクトの全体像を見据えながら、同時に発注者が納得できる事業とするには、プロジェクト全体を的確に遂行するための中立的な舵取り役、つまりマネジメントの専門家が必要となります。本修復工事は全国約130万戸に及ぶ御門徒の浄財によって賄われています。このため、工事の質の確保とともに、高い合理性や透明性・公開性が求められました。また、ひとことで修復工事といっても、屋根瓦工事・木工事・錺金物工事・漆工事など、人間国宝級の専門家が関わる文化財的保存修理と、構造補強・耐震補強・設備改修など最新技術を取り入れた改善修理が混在しています。その中で、伝統技術の保持・先端技術の導入・スケジュール管理・コストのコントロールなどを適切かつ合理的に整理しマネジメントするのが、日建設計に求められる役割です。文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント東本願寺 真宗本廟 御影堂The Restoration of Higashi Honganji Temple:Management for the restoration of a cultural asset重機のない時代に数トンにも及ぶ木材を人力で組み上げた軸組構造。 Massive wooden beams 真宗本廟両堂御修復・御影堂建築主:宗教法人 真宗大谷派 建設地:京都市下京区建物種別:宗教施設構造:木造階数:地上1階延べ面積 :2,891.98㎡ 竣工: 2009年2月(御影堂は2008年12月)Restoration of Goeido (Founder's Hall), Higashi Honganji TempleClient: Shinshu Otani-haLocation: Kyoto, JapanMajor functions: Religious structureStructure: WNumber of oors: +1Total oor area: 2,891.98m2Completion: Feb. 2009(Goeido-Dec.2008)降井繁蔵[ふるい・しげぞう]1942年12月生まれ1968年4月入社日建設計顧問、日建設計コンストラクション・マネジメント副会長SHIGEZO FURUIBorn: Dec.1942Joined: Apr. 1968Adviser, NIKKEN SEKKEI Vice Chairman, Nikken Sekkei Construction Management二宮彰[にのみや・あきら]1952年5月生まれ1989年4月入社日建設計バリューマネジメント部門 東本願寺御修復設計監理室 室長AKIRA NINOMIYABorn: May 1952Joined: Apr. 1989Design Principal, Higashi Honganji Restoration Project, Design and Construction Supervision Team, NIKKEN SEKKEI執筆者プロフィール Authors

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