New Horizons in Structural Design April, 2008
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14FACT NIKKEN SEKKEI    構造デザインの最前線実大実験に裏付けられた建物性能 ミッドランド スクエア名古屋市にある最高高さ247mのミッドランド スクエアの構造設計には多くの特徴があります。まず第一に建物中央部には五重塔の心柱や人間の背骨になぞらえることのできる心棒とでも呼ぶべき「連層鋼板壁チューブ」を設けています。鋼板壁は強くてしなやかな面状の部材ですが、私たちはこの部材に着目して早くから実験により、その性状を確認したうえで多くの高層ビルに適用してきました。最近では、低降伏点鋼という強度の低い鉄骨の性能を利用し地震のエネルギーを吸収する制振壁も開発されてきていますが、ミッドランド スクエアでは逆に強度の高い高張力鋼780N/mm2鋼板壁の実験を行い、高層ビルにおいて極めて重要な足元である1、2階を剛強にする目的のために、この材料を使用しています。超高層ビルでは初めてのことです。ミッドランド スクエアでは制振構造を採用していますが、制振部材、制振装置はそれぞれに効果的な領域があり、目的に応じて使い分ける必要があります。ここでは、風揺れ・長周期地震から大地震にいたるまで、多種多様な揺れに対する安全性や居住性を向上させるよう計画しました。巨大な地震に対しては骨組みの粘り強さが重要であり、その上で頂部に設けたATMDという装置や3層に設けたアウトリガー方式オイルダンパーが、揺れそのものの大きさや継続時間を低減させています。また、揺れ方の異なる高層棟と低層棟をオイルダンパーにより連結することで、強く揺れる低層棟を助ける効果も利用しています。最近ではより大きな荷重を支えるためコンクリートを充填した鋼管柱を用いることも増えてきましたが、ここでは高性能590N/mm2鋼管に、充填コンクリートとしては初めて100N/mm2を採用し、高軸力柱に適用しています。超高層ビルでは、大きな部材を用いることもあり、実大実験による確認やデータの蓄積が求められます。このミッドランド スクエアでは関係者のご理解により、耐震性を担う重要な部位の実大実験を行い、建物の実性能に迫る検証をすることができました。設計や施工それぞれの細分化が進む中、巨大構造物である超高層ビルでは、全体のバランスを考え、包括的につくり込むことがこれまで以上に大切になってきていると思います。▽47F▽44F▽27F▽8F箱形断面柱の性能を確認する実験Verifying CFT column performance連層鋼板壁チューブ:建物を支える背骨Multi-story steel plate wall tubeミッドランド スクエアの構造概念図と実性能に迫る実大実験超高層の大きな荷重を支えるコンクリート充填鋼管柱CFT columns carry the huge load of the high-rise building.Verifying actual performance: Midland Squareミッドランド スクエア&東京ミッドタウンMidland Square and Tokyo Midtown超高層ビルを支える性能とその信頼性Structural Design to Support Super High-Rise Buildings

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