New Horizons in Structural Design April, 2008
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構造デザインの最前線    FACT NIKKEN SEKKEI35木組みを考慮した伝統木造建築の耐震補強こうした近代建築の保存のほかに、私たちはこれまでに重要文化財周防国分寺金堂、国前寺本堂、東本願寺御影堂など伝統木造建築の耐震診断及び補強設計にも参画してきました。伝統木造軸組は地震のように横方向に揺れることについては必ずしも丈夫でありませんが、伝統的仕口構成からなる木組みのしなりやめり込み特性により、粘り強く大きな変形に耐えるという特長を持っています。免震構造に通じるこのしなやかな構造特性を様々な実験を経て適切に評価することで個々の耐震性能を把握し、さらにそこに建物に適した安全性向上のアイデアを付加することで、歴史的意匠を保ったままでの耐震補強を実現しています。真宗大谷派の本山・東本願寺に現存する御影堂は、幕末(1864年)の蛤御門の変による焼失後、1895年に再建され、完成後113年が経過しています。平面規模で東大寺大仏殿を上回る世界最大の木造建築です。8,000㎡ を超える本瓦葺き屋根を巨大な小屋組が支えており、木造軸組としては極めて大きな建物重量となることから、耐震性能については慎重な検討が必要です。京都大学防災研究所の研究グループと連携をとり、梯子状木造梁・乾式土壁パネルの設置など、伝統木造の変形能力を損なわない補強を考案して設計に反映し、工事を行っています。日本文化の継承のために技術力を磨く伝統建築には文化財としての側面があり、その耐震安全性を確保するだけでなく、美観を損ねることなく、建物の歴史的価値を守るという目的があります。また伝統木造建築は独特の架構形式であり、現代の新築建物の設計手法とは異なる技術力が不可欠です。今後もこの分野での実績を増やし、日本文化の継承発展に貢献したいと考えています。大野富男・田代靖彦・西澤崇雄積層ゴムLaminated rubber転がり支承Rolling bearing新設免震層New seismic isolation layer02510m愛知県庁本庁舎建築主 : 愛知県所在地 : 名古屋市中村区建物種別 : 庁舎構造 : 鉄骨鉄筋コンクリート階数 : 地上6階、地下1階延べ面積 : 28,314㎡竣工 : 1938年3月Main Building of Aichi Prefectural GovernmentClient: Aichi PrefectureLocation: Nagoya, JapanMajor functions: government of ceStructure: SRCNumber of oors: +6, -1Total oor area: 28,314 m2Completion: Mar. 1938The underground seismic isolator supports the entire building.地上6階・地下1階の本庁舎を地下の免震装置が支える。登録有形文化財であり、災害時の防災拠点でもある愛知県庁本庁舎の免震補強は、こうした文化財建築としては国内最大規模の改修工事となった。The Main Building represents the most extensive application of seismic isolation retrofitting for a cultural property in Japan.

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