©© 「グラングリーン大阪」における空気の浄化緑被率の増加に伴って大気汚染物質の濃度は減少する傾向にある緑被率の高い地点では,相対的に温度が低くなっており,大気汚染濃度も低くなる傾向が見られた。交通量の多い道路付近、特に交差点ではNO2濃度は高くなり、公園内には低濃度部が広がっていることが報告されている。森林浴でNK細胞が増加都会在住の大手企業に務める男性を対象にした研究で、森林遊歩道に3日間滞在した結果、自然免疫に重要な役割を果たすNK細胞が1日目で26.5%、2日目には52.6%上昇したことが報告された。また、ヒトリンパ細胞内の抗がんタンパク質を増加させることも確認されたという研究結果がある。森林の香りが副交感神経活動を上昇させる木のにおい成分の一つであるα-ピネンが生理的リラックス効果に影響を与え、副交感神経の活動を上昇させると示唆された。心拍の揺らぎ(心拍変動性)における高周波成分は46.8%上昇し、心拍数は2.8%有意に低下したと報告されている。汚染物質吸着・吸収のメカニズム 今回の分析では高木植栽により、年間の総SO2吸収量NO2吸収量O3吸収量はそれぞれ、4.2kg, 10.7kg, 16.6kgとなり、NO2吸収量は車の走行による排気ガスに換算すると、年間では地球を約3.1周走行するときに排出される量に相当する。こういった樹木の空気の浄化作用に加え、下記の文献から示唆されるような森林効果により、NK細胞が活性化され、副交感神経が活性化されることが期待される。うめきた公園における大気汚染の浄化イメージ(北公園断面図)空気の浄化作用に関する文献通常の大気環境では、大部分の植物はその生育に支障のない汚染濃度の範囲内で、二酸化炭素(CO2)の固定に伴って、大気汚染物質を吸収することが明らかとなっている。汚染濃度が高いほど、その吸収量は比例して増えるという結果も報告されており、交通量が多く汚染物質が多い都市部のほうが樹木の汚染物質吸収効果が高いことが期待される。大阪市の大気環境は、光化学オキシダントを除くその他の項目で環境基準値を満足している一方、大気汚染物質の分布をみると、グラングリーン大阪に近い梅田新道地点でNO2濃度が高く、グラングリーン大阪においてまとまった植栽を整備することによりよい大気環境を提供できる状況となっている。文献1-1. 田村優佳、吉野博、北條祥子、他. 都市内緑地の暑熱緩和・大気浄化効果に関する実測調査. 日本建築学会技術報告集. 1999, 第9号, 167-170 文献1-2. 神田学、森脇亮、高柳百合子、他. 明治神宮の森の気候緩和機能・大気浄化機能の評価. 日本気象学会機関誌「天気」. 1997, vol.44, No.10, 713-722文献2. https://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1013-b1.pdf, (参照 2024-03-01)文献3. 森林総合研究所(2017) https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/ saizensen/2017/20170309-03.html, (参照2024-03-01)16幹線道路周辺等から排出される大気汚染物質の吸着など、グラングリーン大阪の樹木はSO2、NO2、O3を吸収し、公園内や地域の快適な生活環境の形成に貢献することが期待される。また森林浴効果により、NK細胞の増加や副交感神経の活性化が示唆される。緑被率の増加に伴ってNO2等の大気汚染物質濃度は減少することが示された。都市部では郊外に比べて、大気汚染発生源が多い傾向にあり、みどりの大気浄化効果も多いことが報告されている。また、緑地にはNK細胞の増加や副交感神経の活性化も期待される。
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