NIKKEN BIOPHILIC DESIGN BOOK vol.1 JR 熊本駅ビル
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28バイオフィリックデザインのアプローチこれまで日建設計では多くの建築や都市開発のプロジェクトにおいて、自然を効果的に取り込んだ空間を創出してきましたが、今後は、バイオフィリックデザインの観点から人に与える効果を評価していくようなアプローチも期待されると考えています。2020年に、William D. Browning and Catherine O. Ryanらが長年の調査と分析をまとめた『Nature Inside』では、『15 Patterns of Biophilic Design』として、自宅、職場、公共空間など、人間の健康を最適化する空間をデザインするためのフレームワークが提示されています。その中で、「優れたバイオフィリックデザインは、周囲の自然環境、社会文化的規範や伝統、建物の機能、その結果として生じる人間のリズムやルーチンなど、多角的な視点に基づくものである」とされています。これらの考えに基づくと、バイオフィリックな要素は、その地域その場所の自然・社会環境を尊重しデザインすることで、無意識にバイオフィリアの効果が得られることを目指すべきと我々は考えます。高密な都市や建築空間に適切に自然を取り込むにあたっては、直感的に任意に自然を配置するだけではなく、コンピュータ上で最適な環境を予測してデザインすることが重要です。自然界でも、植物は自分が生育する場所を探してその環境条件に応じて成長することから、そのようなプロセスでデザインすることでより自然に近い空間づくりができると考えます。また、バイオフィリアの効果を理解し、風・温熱・音環境等のシミュレーションを活用し適切にデザインに活かす技術は自然環境の有するポテンシャルを活かした設計として今後ますます重要になってくるでしょう。新ダイビル堂島の杜/大阪市都心において敷地の約50%が緑化された「堂島の杜」では人々は街中で森林浴を楽しんでいますYANMAR FLYING-Y BUILDING/大阪市高さ60m、1200㎡の大規模壁面緑化と最上階に設置されたガラス張りの都市養蜂スペース「ビーガーデン」等が癒しと環境教育の場を提供していますサクラマチクマモト/熊本市まちと全ての施設をつなぐ建築屋上の回遊庭園では、人々が憩い、居心地の良いサードプレイスとなっていますミュージアムタワー京橋/東京都超高層オフィスと緑が一体となり生み出された空間が知的生産性に貢献する新しいワークスタイルを提案しています地域の自然・社会環境のコンテキストを読み込んだデザインデザインとエンジニアリングの融合日建設計が考えるバイオフィリックデザインのアプローチ

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