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[宮沢] [山名] おすすめのヘリテージ建築─ 第18回 2022年4月6日18th Meeting, April 6, 2022─ヘリテージ建築の楽しみ方Appreciating Heritage Architecture [講師・モデレーター]宮沢 洋画文家、編集者、BUNGA NET編集長Speaker and Moderator: Hiroshi MiyazawaWriter, illustrator, editor, editor-in-chief of Bunga Net [講師]甲斐みのり文筆家Speaker: Minori KaiAuthor [講師]山名善之建築家、美術史家、東京理科大学教授Speaker: Yoshiyuki YamanaArchitect, art historian, and professor at Tokyo University of Science [講師]西澤崇雄日建設計 エンジニアリング部門 サスティナブルデザイングループ ヘリテージビジネスラボSpeaker: Takao NishizawaHeritage Business Lab, Sustainable Design Group, Engineering Department, Nikken Sekkei [甲斐] 港区立日本の近現代の建物は、経済成長を優先し、スクラップ&ビルドで更新される傾向にありました。しかし昨今、建築技術の進化により、古い建物のもつ魅力を損なうことなく機能を更新できるようになり、新たな価値を発揮し始めています。今回はヘリテージ建築に造詣の深い3人のゲストをお迎えし、座談会を行いました。Modern Japan’s high priority on economic growth led to a tendency toward “scrap and build” urban devel-opment. Recent advances in architectural technology, however, have made it possible to upgrade the func-tionality of older buildings while maintaining their admirable qualities, thereby bringing out new value in them. For this Forum, we talk with three people knowl-edgeable on the subject of heritage architecture.名古屋テレビ塔(中部電力MIRAI TOWER)@名古屋ル・リュー・ユニーク@フランス ナント36郷土歴史館@東京宮沢 洋(以下、宮沢) 近年、ヘリテージ建築みたいなものをおもしろがるように日本人の意識が変わってきましたね。山名善之(以下、山名) この20年ぐらいから具体的に建物がリノベーションされるようになり、新しいところでビールを飲むより、古いところで飲んだほうがおいしいんじゃないかという雰囲気が若い人たちにも出てきたように思います。甲斐みのり(以下、甲斐) 数年前から、「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」のようなイベントも開催されるようになり、こんなに同志の建築ファンがいるんだという喜びを感じられるようになりました。宮沢 甲斐さんの『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ、2018年)が出たとき、私は「建築巡礼」(日経アーキテクチュア)を10年くらい連載していましたが、もうちょっと裾野を広げるには食べ物じゃないかと思っていたところをグッと抜かれたので、やられたと思いました。甲斐 私は素人代表の建築ファンで、建物が与えてくれるときめきを伝えていきたいと考えていました。その第一歩として、難しい建築の構造は私自身が全然わからないので、まずここでこんな体験ができるよということを伝えたい。また、専門家の方が教えてくださるストーリーを聞くと、建物もまちも土地もより好きになっ宮沢 建築のよさを専門外の人に伝えるにはどうしたらいいでしょう。山名 建築関係者が、開かれていない専門集団のように思われていることが一番問題だと思います。我々建築側が心の扉を開くんです。たとえば建築家が町内会に出て、共感を得られる言葉で建物を説明する、そういう輪を広げられるといいですね。甲斐 今、写真もすごく重要です。見た人が自分もそこへ行きたい、ときめきを共有したいと思えるような、身近な目線の写真です。宮沢 文化財のような公的制度とヘリテージ活用との関係性はどのように思われていますか。山名 「ヘリテージ」という言葉は、もともとフランス語で「受け取る」という意味の古語から来ています。受け取っていくという主体的な意識が共有できると、公共的な価値が生まれて、文化財という行政的な処置に入っていく。文化財は、その建物の周りにいる受け取り手の人たちが一番重要です。宮沢 公的なお墨付き以外に、これからのヘリテージ活動には何が重要になってくるでしょう。山名 その建物について知りたいという欲を起こさせるような魅力を、建物自体が保ち続けること。一方で、散歩をして、建物に目を留めて、そして知る、そういう機会があることも重要だと思います。甲斐 私も、まちに出てまち歩きをする、その楽しみが大切だと思います。コース化やツアーなどで、こんな体験ができる、仲間ができる、そういう広がりができていくといいなと思います。ていくので、そういうことも伝えていきたいと思っています。

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