コストマネジメントレポート

2025年1-3月号を掲載しました。
「建設物価の動きに変化のきざし、建築を中心に騰勢弱まる」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計技術部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

建設物価の動きに変化のきざし、建築を中心に騰勢弱まる

足元の建設物価の上昇勢い弱まる

2022年以降、建設物価は年間16~20%の上昇が続いたが、直近四半期だけを見ると上昇の勢いは弱まっている(図1)。過去3年の上昇要因を工事別にみると、22年は建築の寄与度が大きく、23・24年は設備の寄与度が拡大した。

設備工事の上昇要因は労務費・専門工事

工事ごとの上昇要因を見ると、建築は仕上材・労務費・経費などは一定の上昇が続いているものの、ウエイトの大きい鋼材上げ止まりの影響で上昇幅が縮小。電気は労務費、空調・衛生は専門工事・労務費の影響が大きく23年からピークアウトしたものの高い上昇率が継続している(図2)。
  • 図1 NSBPI*1の年間上昇率の推移 図1 NSBPI*1の年間上昇率の推移
    日建設計作成。

  • 図2 工事別NSBPIの年間上昇率と寄与度の推移 図2 工事別NSBPIの年間上昇率と寄与度の推移
    日建設計作成。空調の材料にはダクト工費を含む。

鋼材価格は下落も生コン価格は上昇

建築の上昇要因であった鋼材は需要の弱まりを受け値下げの動きがみられる(図3)。一方で東京地区生コンクリート協同組合は25年4月から14%の値上げを公表。原材料および生コンメーカーの輸送費・労務費の上昇が主要因。輸送費・労務費の上昇による資材価格上昇は今後も継続すると考えられ、留意が必要である。

機械サブコンの産業施設の選別受注が進む

設備サブコンの逼迫状況に改善は見られず、設備サブコン確保が困難な状況が続いている。中でも機械サブコンは比較的工期が短い工場、研究所、データセンターなど産業施設の受注比率を増やしており、選別受注の様子が覗える(図4)。また若手施工管理者育成のために中小規模工事への選好を強めるなど、用途・規模による価格差が表れ始めている。
  • 図3 鋼材・生コンの価格推移 図3 鋼材・生コンの価格推移
    日本銀行「企業物価指数」より作成。

  • 図4 受注高に占める産業施設工事の比率 図4 受注高に占める産業施設工事の比率
    各社決算資料より作成。

勢い弱まるも、上昇継続

日建設計標準建築費指数NSBPI*1

建築・設備工事ともに従前に比べ上昇勢いに緩みが見られるが、年率1割を超える上昇率は継続している。 (図5・6)
建築工事は鉄筋・鉄骨などの材料が下落。仮設、躯体、仕上工事全般が上昇するも、一部工種の横ばいや下落により、全体として上昇勢いは緩んだ。設備工事は労務費や専門工事費に加え経費率も上昇したが、従前より上げ幅を縮小する傾向が見られた。特に関西圏では、用途や規模によっては価格低減努力が見られる案件もあった。一方でコンクリートなど資材や労務費の上昇圧力が強まる工種もあり、今後も注視が必要である。
  • 図5 NSBPIの推移 図5 NSBPIの推移
    ※今号から表示期間を変更。

  • 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

建設業法等の改正により契約時のルールが変更

建設業の担い手確保を目的として昨年6月に建設業法等が改正された(図7)。資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止に関する規定は12月13日に施行され、国土交通省のガイドラインも改訂された。請負代金等の変更額の算定方法について、ガイドラインでは協議により定める旨の記載例が示されているが、案件によっては受注予定者から具体的な算定方法の記載の提案を受けることも考えられるため、今後の動きに注意が必要である。

軽量コンクリート出荷制限による工事費増リスク

高層ビルなどに使用される軽量コンクリートの材料である軽量骨材は21年4月から生産者が国内1社となり需給が逼迫している。高層ビルの建設投資は旺盛で需要超過状態は変わらず、軽量コンクリートの出荷制限は続く見通しで、これによる工事費上昇リスクに留意が必要である(図8)。
  • 図7 建設業法等の改正による民間発注者への主な影響 図7 建設業法等の改正による民間発注者への主な影響
    国土交通省「第三次・担い手3法について」より作成。

  • 図8 軽量コンの出荷制限による影響 図8 軽量コンの出荷制限による影響
    日建設計作成。

*1:日建設計標準建築費指数 NSBPI:
日建設計が独自に算出している建設物価の値動きを示す指数。標準賃貸オフィスを数量モデルとして、
独自調査により把握した実勢価格を随時反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。
*2:朝日工業社、三機工業、大気社、ダイダン、高砂熱学工業の5社。
*3:大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設の4社。

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