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2025年日本建築学会賞(作品)に、高槻城公園芸術文化劇場が選定されました。

伊藤彰[アイフォト]

 2025年日本建築学会賞(作品)に、弊社が設計を担当した高槻城公園芸術文化劇場が選定されました。弊社にとって大変光栄なことと受け止めております。関係者の皆様に感謝いたしますとともに、今後一層、魅力のある作品づくりに努力いたします。

<受賞者名>
江副敏史、多喜茂、高畑貴良志

 <選評>


建築とは諸々の技術を統合しながら、優れた空間の実現を志向するものである。またそれが公共施設ならば、施主や条件の特殊性に閉じることなく、同時代性を受けとめながら、より良い社会と環境を広く生みだすことに貢献することが求められる。以上の前提を踏まえたとき、「高槻城公園芸術文化劇場」は、意匠、計画、環境、材料、構造など、建築的な総合性を高い水準で獲得しており、その上で、学会賞としてふさわしい新しい実験や挑戦を遂行した突出した作品として評価できる。以下に、重要なポイントを挙げよう。

第一に、広く開かれた公共建築である。1 階レベルを少し持ち上げ、地下 1 階もアクセスしやすくし、断面構成を工夫することで、全体としての高さを抑えた。またボリュームを分節し、大小のボックスを中庭とともに散りばめることで、威圧感をなくすだけでなく、公園と一体化し、あちこちに出入口をもつ。そしてホワイエ、スタジオ、カフェなど、ほとんどの空間がガラス張りになっており、透明感にあふれる。小ホールも両サイドに自然を感じる開口が設けられた。公演時以外も閉鎖的になることなく、平常時に通り抜けができ、近くの住民や子どもたち、あるいは隣接する 2 つの学校の生徒も立ち寄っている。

第二に、「高槻の杜」をコンセプトに掲げ、徹底的に木材の活用を試みていること。これ自体は近年のトレンドでもあるが、さらにその先の可能性が追求された。すなわち、大阪府の森林組合に年間素材生産量を確認し、およそ 350㎥使うことを決め、丸太から切り出す際も、BIM で管理しながら、部位ごとの特性を考慮し、外装、内装、小ホールなどに割り当てる。木製ルーバーについては、外部の材は液体ガラスに含浸させ、ランダムな揺らぎを与えながら並べ、微細な陰影の差を生みだしたり、ホワイエで整然と配置することで、城下町の立格子を想起させるなど、様々な表情を与える。特に大ホールは、木の芯持材を使い、壁から天井まで、ピクセルのように、2 万 7 千個の木キューブで覆うことによって、個性的かつ豊かな音空間を実現した。なお、案内板や什器にも、木が使われている。

第三に、決して過剰には主張しないが、確かなエンジニアリングに支えられたデザインやディテールである。例えば、大屋根の出隅部となるエントランスや、片持ちトラス梁によるホワイエにおける無柱の空間、あるいは細い柱は、公園とつながる開放感をもたらす。また大小のホールにおける木ルーバーや木キューブは、音響シミュレーション、試験体、モックアップなどのスタディを通じて設計・施工された。

よって、ここに日本建築学会賞を贈るものである。

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