PRESS RELEASE

人流をリアルタイムで計測し、都市や建築の空間評価に活かす3D-LiDARシステムを開発
賑わい創出に向けた空間改修・設備の省エネ制御・災害時の避難誘導などに活用

株式会社日建設計(本社:東京都千代⽥区、代表取締役社⻑:⼤松敦、以下「日建設計」)は、株式会社デンソーウェーブ(本社:愛知県知多郡、代表取締役社長:相良隆義、以下「デンソーウェーブ」)と協働し、3D-LiDAR※1を用いて人流をリアルタイムで計測するシステムのプロトタイプを開発しました。
日建設計は、人々が交流・活動する場として数多くの都市と建築の空間をデザインしてきました。空間に対するニーズが時とともに変化していく中で、運用時の人の動きを定量的に評価し、空間の課題抽出や改善提案、施設運用に活かすことで、更なる価値向上を実現できると考えます。日建設計の東京オフィスのパイロットフロアにて本システムの本格運用を開始しています。

図1.滞在データに基づく空間改善提案のイメージ
 (設置した什器による人の滞在効果を検証し、より快適な空間提案を実現)

人の移動と滞在をリアルタイムで把握し、空間評価に活かす

近年、自動運転や交通量調査に応用されている3D-LiDARを用いた人流計測技術は、カメラやビーコンに比べて位置検出の正確性が高く、個人情報を取得せずにリアルタイムで計測できるなどのメリットがあります。一方、大量の点群データによって人の形状を認識するためには莫大な計算資源が必要であり、広い空間内で不特定多数の行動を把握するには、操作や処理が重いという課題がありました。
そこで日建設計とデンソーウェーブは、現時刻と前時刻の点群の差分によって移動体を抽出するという解析方法に「人は突然出現・消失しない」という前提に基づくポスト処理アルゴリズム(特許出願中)を組み込みました。これによって、移動体が停止しても見失わず、人の移動と滞在を少ない計算資源でも把握できる3D-LiDARのシステムを実現しました。どの空間を、いつ、どの程度の人が利用しているのかが分かることで、空間の利用実態に応じた改修計画、人流と連動した設備の省エネ制御やロボット運行経路の補正、リアルタイムの人流把握による災害時の避難誘導やイベント時の混雑検知などに役立てることができます。

適用事例:東京駅八重洲口開発「GRANROOF GARDEN」

2013年に完成した東京駅八重洲口開発・グランルーフでは、パブリックスペース活性化に向けた約234mのペデストリアンデッキのリニューアル工事に際して、新たな植栽と什器が先行的に設置された箇所において、本システムによる効果検証を行いました。本システムが実測したデータの分析結果によれば、滞在人数が平日で約12%、休日で約84%増加しており、これまでの通行空間が滞在空間に転用されていることを確認しました。この評価が、長大なデッキ全域への工事実施という大きな投資判断につながりました。

図2.先行整備箇所における効果検証時の様子

図3.本システム画面のイメージ

図4.本システムによる評価結果のイメージ

図5.改修後のグランルーフ2階「GRANROOF GARDEN」の様子

今後の展望について

日建設計は、本システムを空間の課題抽出や改善提案に活用するとともに、人流と連動した設備の省エネ制御への挑戦として、2024年に東京オフィスにおいて、滞在人数に応じた照明制御の検証を開始する予定です。また将来的には、3次元の都市モデル(Plateau※2)や建物モデル(BIM※3)と統合することも想定されます。都市や建物の静的なデータに本システムで取得した時系列の動的なデータが付加されることで、4次元的なデジタルツインの構築が可能になります。

日建設計について

日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。

デンソーウェーブについて

デンソーウェーブは、社会・産業の生産性向上を実現するソリューション・製品を提供することで、より安心で環境にやさしい社会づくりに貢献しています。その事業領域は、セキュリティ・キャッシュレスなどの各種システムを提供するソリューション事業、バーコード・QRコードリーダ等を手掛ける自動認識事業、産業用小型ロボットを手掛けるロボット事業、セキュリティコントローラ・プログラマブルコントローラの開発を担う制御機器事業、DXを実現するIoT製品を手掛けるIoT事業と多岐にわたります。

お問い合わせ

株式会社日建設計 広報室 Tel. 03-5226-3030  e-mail:webmaster@nikken.jp
※1 Light Detection and Rangingの略称。レーザーを照射して物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、対象物までの距離を計測する技術。3D-LiDARでは、3次元の距離計測により3次元点群データが得られます。
※2 国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの設備・オープンデータ化プロジェクト。
※3 Building Information Modelの略。建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で建物情報を活用するために、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルにコストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加したデータベース。

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