Biophilia

Scroll Down

人と建物と自然のつながりを求めて
Biophilic Design とは、生命や自然との融合を志向する建築デザインのことであり、建築と設備の設計においては、新しい概念でも回顧的な思想でもなく、普遍的なテーマといえる。生物や植物の形態に見られる合理性、自然淘汰の必然性、生態系のもつ循環性などを設計技術として建築に生かすことは、いつの時代にも我々エンジニアに求められる責務であり、持ち合わせなければならないセンスであり、それが建築の固有性と多様性を生み、有形無形の豊かさやつながりを創出するものと考えている。

CATEGORY

RELATED EXPERTISE

自然の形態の合理性を応用する

ヤンマー本社ビル。都市のエコロジカル・コロニー形成ダイアグラムと大規模壁面緑化 ヤンマー本社ビル。都市のエコロジカル・コロニー形成ダイアグラムと大規模壁面緑化

都市養蜂の場となる屋上庭園 都市養蜂の場となる屋上庭園

緑は内と外を柔らかにつなぎ、都心にクールスポットを提供する 緑は内と外を柔らかにつなぎ、都心にクールスポットを提供する

いわゆるbio-mimicryと称される手法は、建築デザインにおいては、建物の構成要素に部分的に適用されるに留まらず、建物全体のDNAとして組み込まれるべきものであろう。事例では、直接的・間接的なbio-mimicryの要素が、人と自然と都市のつながりを求めた都市型環境共生建築として系を成しているものである。
揺らぐ葉のような建物形状と雨水利用率100%の大規模壁面緑化は、都心の風環境と温熱環境を改善する。壁面緑化は地層を想起する外装ルーバーとともに、日射を遮蔽しながら光と影の揺らぎを提供し、外と内を柔らかにつなぐ。植物や貝殻にも潜在するフィボナッチ数列の螺旋階段は、効率的に自然の風を取り入れる器官として機能する。その最上階にある屋上庭園の都市養蜂は、花を携える壁面緑化や外構と共に、受粉を媒介するミツバチの行動範囲による都市のエコロジカル・コロニーを形成する。

素材の魅力を引き出す

木材会館。総量1,000m3を超える木材を使用しており、それは面積にして7haに及ぶ森林が都心部に移動され、600tを超えるCO2が都心に固定されたことを意味している 木材会館。総量1,000m3を超える木材を使用しており、それは面積にして7haに及ぶ森林が都心部に移動され、600tを超えるCO2が都心に固定されたことを意味している

オフィス断面詳細図   木ダクト詳細図   木ダクト温度勾配図 オフィス断面詳細図 / 木ダクト詳細図 / 木ダクト温度勾配図

Biophilic Designの本質は、自然の要素を無作為に取り入れるのではなく、その特性を引き出し、生かす形で組み立てることにある。事例は、木という素材にこだわり、都市における木利用を一般化する試みであり、日本古来の木の文化に根差した環境建築を示す試みでもある。四季のある日本の気候に適した木のポーラスな中間領域は、ワークプレイスに自然をアフォードする仕組みであり、自然を身近に感じ、知的生産性の向上にも寄与する光と風とコミュニケーションのテラスである。また、鉄骨梁にかぶせる内装木を、木ダクトとして利用している。これは、木材の持つ断熱性と調湿性を生かす所作である。

自然循環の仕組みをデザインに投影する

押上駅前自転車駐車場。ヒートアイランドを抑えて都市の温熱環境改善に寄与し、雨水流出をゼロとして都市インフラへの負荷を軽減する“親水建築”であり、道行く人々が憩う都市のクールスポットとなっている 押上駅前自転車駐車場。ヒートアイランドを抑えて都市の温熱環境改善に寄与し、雨水流出をゼロとして都市インフラへの負荷を軽減する“親水建築”であり、道行く人々が憩う都市のクールスポットとなっている

気候特性分析に基づき、敷地に降った雨の収支バランス(IN/OUT)が100%となるように、有機・無機の3素材の構成比率を決定している 気候特性分析に基づき、敷地に降った雨の収支バランス(IN/OUT)が100%となるように、有機・無機の3素材の構成比率を決定している

事例は、敷地に降る雨を100%有効活用し、ただそこに佇むだけで都市環境と共生するパッシブ建築である。降雨量や日射量といった敷地の気候特性を読み解き、「保水セラミックス」「屋上緑化」「木製デッキ」の3素材を用い、雨の集水量、保水量、そして蒸発量(植物の光合成・蒸散含む)をコントロールし、敷地に降った雨の収支バランス(IN/OUT)が100%となるようにそれぞれのボリュームを決定している。私性に頼らずに自然の循環システムをデザインに投影していくことで、生物が生息地域の気候に適応するかのように、その敷地の気象条件の固有性を表現し、多様性を示唆する有機的な建築が生まれる。

シンプル化の方程式を解く

日本経済新聞社東京本社ビル 日本経済新聞社東京本社ビル

建築・構造・設備のインテグレートを図った梁ダクトシステム。  外装マリオンは給排気口を兼ねる 建築・構造・設備のインテグレートを図った梁ダクトシステム。
外装マリオンは給排気口を兼ねる

自然界では無駄な機能は淘汰され、シンプル化される。建物の設計においては、独立した役割を担う設備が多重に実装されることがあるが、機能統合の連立方程式を解くことで、無駄を排除し、空間の豊かさや安全性、環境性能を高め、両立させていくことが可能である。事例は、構造の梁をダクトとして利用することで、高天井による開放感だけでなく、自然採光と置換空調による快適性・省エネ性、蓄煙空間確保による安全性、そしてダクト類の省略による省資源性を同時に獲得しているものである。

HCL~人体の好きな照明~

光色による生理・心理反応実験 光色による生理・心理反応実験

 人類誕生から現在までを100とすれば、近代的な生活の時間はわずか0.2%。ほとんどを自然の中で生きてきた人間が人工照明だけで概日リズムを保つことは難しく、自然光の利用が重要となる。 (篠原奈緒子、石崎勝司、綿貫 將)

HCL~人体の好きな色~

生物時計 生物時計

メラトニン分泌と光の制御 メラトニン分泌と光の制御

 一般的な照明の色だけでなく、カラフルな空間で執務効率が上がるか?会議室などで被験者を使った心理実験を行った結果、オフィスでは若草色の照明が快適性などが上がることがわかった。(中村公洋)

色温度と心理的印象

色温度の活用事例 色温度の活用事例

色温度の心理影響に関する被験者試験(滞在時間の短い空間向け検証) 色温度の心理影響に関する被験者試験(滞在時間の短い空間向け検証)

 赤は暖かく、青は涼しい。このことから低色温度は暖かく、高色温度は涼しいと言われている。これを定量的に扱い、空間の印象をコントロールするための研究を進めている。(服部佳史)

屋外と屋内のつながり

空間の連続感指標の開発 空間の連続感指標の開発

 外は明るいけど、中は暗い。日本家屋などの縁側は室内に照明がなくても明るいのに。現在の建物でも屋外と屋内をうまくつなげることで室内を明るく見せるための研究を行っている。(加藤元紀、明本 学)

木陰のそよ風に着想した自然換気併用放射空調

木陰のそよ風に着想した自然換気併用放射空調システム 木陰のそよ風に着想した自然換気併用放射空調システム

 近年採用例が増えてきた放射空調。この計画例では、木陰のそよ風の気持ちよさに着想した『自然換気併用放射空調システム』を新たに構築している。被験者実験と実測によりその性能を実証した。(杉原浩二)

公園でデスクワークは可能か

夏期の温度環境を30℃から28℃に2℃改善した際の生産効率性試算例 夏期の温度環境を30℃から28℃に2℃改善した際の生産効率性試算例

生産効率性評価ツールを用いた作業効率評価 生産効率性評価ツールを用いた作業効率評価

 ICTの発達により働く場所はオフィスに限定されなくなった。パブリックスペースにおける執務の実現可能性について、公共空間における作業効率評価ツールを開発して評価検討を行っている。(山口 峻)

ガイソウコ(外装アイデア倉庫)

ガイソウコ。新提案のための要素技術データベース ガイソウコ。新提案のための要素技術データベース

 3次元CADツールの発達により外装デザインの自由度が広がった。このツールを使って新たな外装デザインへと発展させるため、「アイデア段階」「開発済み」「実現済み」のカテゴリーで新素材を分類し、アイデアの多角的な整理を行った。(平田裕信)

外皮負荷抑制手法の進展

環境デザインマッピング 環境デザインマッピング

 外皮負荷制御手法には庇やルーバーなど人工的デザインが用いられてきたが、水や植物など自然の生理作用を生かす手法が採用されるようになってきた。特に建物の外部環境に配慮した手法は都心部でのヒートアイランド対策に有効である。(山本純子)

このIdeasは、設備設計グループに所属する約200人のメンバーひとりひとりが、毎年1年をかけてアイデアを提案する活動「ID200」の中から生まれたものです。

当サイトでは、クッキー(Cookie)を使用しています。このウェブサイトを引き続き使用することにより、お客様はクッキーの使用に同意するものとします。Our policy.