CEEL/Simulation

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現代の建築に欠かせない環境解析。日建設計では、専門家集団「環境デザインスタジオ」による環境計画・設計・検証の手段の一つとして、模型実験と並んでシミュレーションの開発を1980年代から進めてきた。ハードウェアの進化に合わせ、高度化やVR(仮想現実)による見える化などの開発を進める一方で、設備エンジニアや建築家が広く利用可能な汎用シミュレーションツールの活用も検討している。

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RELATED EXPERTISE

環境シミュレーションの高度化、拡張

環境解析ツールとしての高度化が進むシミュレーション。その開発のキーワードは「つながる」。例えばBIMとのつながりでは、設計フェーズごとにシミュレーションに最適な情報量を持った連携が喫緊の課題である。日建設計では、光環境解析専用のシミュレーションにブラインド計算機能を追加するなど自社開発を進める一方で、BIMとのつながりが容易な(あるいは一体の)パッケージ化された環境・エネルギー計算ツールなどの試用、検証も進めている。見えないものを「見える化」してきたツールとして、MR(Mixed Reality)やVR(Virtual Reality)は、大きく伸ばしたい分野である。モニタから離れた空間の中で、発注者や設計チームとつながるコミュニケーションツールとして期待される。グローバル化が進み、環境指標のLEED、健康指標のWELLで使用される環境・エネルギー評価指標に合った解析が求められることも増えた。世界とシームレスにつながることも課題である。

VRの活用~膨らむイメージ VRの活用~膨らむイメージ

VRの活用~コミュニケーションツールとしての進化 VRの活用~コミュニケーションツールとしての進化

設計フェーズによる環境シミュレーション活用イメージ 設計フェーズによる環境シミュレーション活用イメージ

コンピューテショナル エンジニアリング

ID200を契機に設備設計グループ内に立ち上がったタスクフォースチーム、CEEL(Computational Environmental Engineering Lab)。設計の本質である「創造」にコンピュータを用い、建築の大きな要素である環境面から建築や設備システムのエンジニアリングを進める平均年齢の若いチームである。
まずはRhinoceros + Grasshopperのプロジェクトへの具体的な適用からスタートし、環境の数値化、可視化、最適化のケーススタディは、新しい時代の設計ツールの有効性を実感させる。大きく議論を呼んだのは評価のパラメータに何を選ぶか、環境面だけでなく、コスト、工期あるいは建築自体の美観など、総合的な視点を取り込んだ活用に発展させていきたい。

空間に最適な採光と照明を提供

日本の夜景を超狭角LED投光器の開発で実現(東京スカイツリー®, 2012) 日本の夜景を超狭角LED投光器の開発で実現(東京スカイツリー®, 2012)

ダクトに入る光の量を測定 ダクトに入る光の量を測定

自然光の入り方で変わる連続感。 窓面輝度を抑えると室内の明るさ感が確保できる。(コープ共済プラザ、2016) 自然光の入り方で変わる連続感。
窓面輝度を抑えると室内の明るさ感が確保できる。(コープ共済プラザ、2016)

 空間と光。その最適な関係のために、模型実験やシミュレーション、実測・評価、器具開発、調整を通じて、採光と照明環境を提案する。オフィスへの自然光の入れ過ぎは視環境上のマイナス効果、カラーライティングが空間を活性化させる、このような研究も進行している。 (海宝幸一、石崎勝司、篠原奈緒子)

風と熱を見える化し、気持ちよい空間を実現

改良型ウォールスルー空調機の検討(左:風速、右:圧力差) 改良型ウォールスルー空調機の検討(左:風速、右:圧力差)

  • 限られたスペースでの室外機の ショートサーキット検討 限られたスペースでの室外機の
    ショートサーキット検討

  • 空間全体を暖めなくても快適な放射空調 空間全体を暖めなくても快適な放射空調

風洞実験レベルの検討が建築家でもできる「風環境評価ツール」(某事務所ビル) 風洞実験レベルの検討が建築家でもできる「風環境評価ツール」(某事務所ビル)

 街区スケールモデルを用いた建物の外皮性能、屋上の室外機性能、屋内では放射空調による快適性評価など、風と熱と建築に関わる最適な状態を提案する。BIMデータを活用した、計画初期段階で使える簡易な風環境ツールも開発している。(永瀬 修)

心地よく適音適所な空間の実現をめざして

反射音特性を確認する音響シミュレーション(某音楽ホール) 反射音特性を確認する音響シミュレーション(某音楽ホール)

〈左〉実験室での聴感実験・東大生研坂本慎一研究室との共同研究 〈右〉完成したレッスン室(愛知県立芸術大学音楽学部校舎) 〈左〉実験室での聴感実験・東大生研坂本慎一研究室との共同研究
〈右〉完成したレッスン室(愛知県立芸術大学音楽学部校舎)

試奏や計測による確認(某音楽ホール) 試奏や計測による確認(某音楽ホール)

庇を外部騒音低減に活用する検討例(東大生研坂本慎一研究室との共同研究) 庇を外部騒音低減に活用する検討例(東大生研坂本慎一研究室との共同研究)

 音楽ホールの豊かな響き、会議場での聞こえやすい音、パブリックスペースの賑わいなど、空間に合わせた音環境は、完成するまで見えないからこそ詳細なシミュレーションや実験・計測を行い、経験知と想像力を働かせて設計する。特にホール等の音楽空間では、現場での試奏確認によるベストチューニングも我々の仕事である。(司馬義英、中川浩一、青木亜美、井上瑞紀)

エネルギーシミュレーションの進化とともに

複数の建物の熱負荷と電力負荷を効率よく処理するスマートなエネルギー供給システムの検討例 複数の建物の熱負荷と電力負荷を効率よく処理するスマートなエネルギー供給システムの検討例

年間シミュレーションによる設備容量の自動調整の例 年間シミュレーションによる設備容量の自動調整の例

 80年代の熱負荷計算プログラムACSSに源流を持ち、その後、空調システム選定・エネルギー消費計算プログラムであるFACES、ライフサイクルエネルギーマネジメントツールLCEM、そして総合的エネルギーシミュレーションツールBESTなどに発展したエネルギーシミュレーションツールを主体的に開発している。(二宮博史、飯田玲香)

木壁は楽曲のように折り重なり観客を包み込む

東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス(2019) 東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス(2019)

音線法により反射音経路や客席到達音を解析 音線法により反射音経路や客席到達音を解析

「まちと協奏するみどりの中の音楽大学」をテーマとした新キャンパス計画。中心となる室内楽ホール(422席)は、意匠的にも音響的にも優しく深く包み込まれるような空間デザインとしている。市販の音響解析ソフトに加え、RhinocerosとGrasshopperを組み合わせた社内開発アプリケーションを用い、壁の形状や折れ点、段数、幅等をパラメ—タとした検討を行うことで、意匠と音響の両立する最適解を導き出した。

良好な光環境の確保と省エネルギーの両立を図る

津市産業・スポーツセンター サオリーナ・三重武道館 津市産業・スポーツセンター サオリーナ・三重武道館 メインアリーナ

健康づくりは自然光利用から。 構造とIntegrateした光ダクト+ハイサイドライト(津市産業・スポーツセンター サオリーナ・三重武道館、2017) 健康づくりは自然光利用から。
構造とIntegrateした光ダクト+ハイサイドライト

良好な光環境の確保と省エネルギーの両立を図ったスポーツ施設。体育館で一般的に用いられるハイサイドライトに加えて光ダクトを導入することで、プレイエリア全体に自然光を導入し、昼光率を大幅に向上させた。構造体である梁に光ダクトを組み込むことで実現した。 人工照明と自然採光を併用することで、光の質(演色性)の大幅な改善も見込まれる。
  • 光ダクトからの年間平均採光量(8時~16時/晴天)予測平均照度200lx 光ダクトからの年間平均採光量(8時~16時/晴天)予測平均照度200lx

  • 光ダクトからのピーク時採光量予測平均照度450lx 光ダクトからのピーク時採光量予測平均照度450lx

都市での日常生活を自然と融合させ、地域と共に営み・育んでいく「Urban Farm」

上海緑地中心 / 徐汇绿地缤纷城(2017) 上海緑地中心 / 徐汇绿地缤纷城(2017)

都市での日常生活を自然と融合させ、地域と共に営み・育んでいく「Urban Farm」をめざし、本建築の環境向上に留まることなく、周辺エリアの眺望・環境にも貢献している。
また、ヒートアイランド現象の緩和のため、地表面被覆の改善に加え、都市にスムーズに風を通すような計画とした。
上海の開発ラッシュの中で新しい価値観が芽生えてくれることを期待している。

都市の風シミュレーション

都市の風シミュレーション

ビルが密集すると都市の熱がこもるため、風を通すことで排熱を促す。風があることで体感温度は涼しくなる

地表面温度のシミュレーション コンクリートでは表面温度が50℃以上に上昇するが、高木や芝生にすることで約15℃下がり、照り返しを防ぐことができる 地表面温度のシミュレーション
コンクリートでは表面温度が50℃以上に上昇するが、高木や芝生にすることで約15℃下がり、照り返しを防ぐことができる

このIdeasは、設備設計グループに所属する約200人のメンバーひとりひとりが、毎年1年をかけてアイデアを提案する活動「ID200」の中から生まれたものです。

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