空飛ぶクルマが拓く未来
—Advanced-Air-Mobilityがまちへやってくるー

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Advanced-Air-Mobility(AAM)とも呼ばれる「空飛ぶクルマ」は、垂直離着陸、静音性、電動化、自動化によって「空の移動」を身近にし、まちづくりの未来を拓く重要な交通手段として期待されています。海外ではエアタクシー事業のローンチが準備されつつあります。国内でも、開発中の実機を用いた有人試験飛行が開始されました。
空飛ぶクルマの離着陸スペースである「バーティポート(Vertiport)」がまちづくりや建築計画と融合し、各地の運航ネットワークと結ばれることで、私たちの暮らしに、持続可能でワクワクするような新たな価値が生み出されていくことでしょう。

空飛ぶクルマの航路を見込んだ未来の都市デザインの近未来と長期展望。地上交通が減った結果、道路は緑に返っていく。新たに空からの視線とアプローチが生まれるため、都市も建築もより立体的に進化していく。

空飛ぶクルマの登場はまさしく空の移動革命です。
これまで空の移動といえば、空港に行って大勢と共に飛行機に乗るか、ドクターヘリなどの医療現場や災害救助での利用をイメージされるかもしれません。
しかし、個人や家族でタクシーに乗るように、目的地へ直接、空から移動できるようになったら?
生活は一変するでしょう。同時に地上が抱える様々な社会課題も空から解決できるかもしれません。

例えば、生活に身近なショッピングモールの屋上に空飛ぶクルマに乗り降りできるバーティポートを設置。車や電車でモールへやってきた人が、空飛ぶクルマに乗り継いで気軽に別の街へ遊びに行く。

空飛ぶクルマの飛行距離は30~100㎞圏が想定されており、これは東京駅を中心として一都六県をカバーするくらいの大きさです。この中距離の移動を空で行えば、障害物を迂回する必要のある陸路を自動車で行くよりも移動時間や移動距離を短縮でき、地上交通の混雑解消にも有効です。空飛ぶクルマは電気で動く乗り物のため、大気汚染の原因となる排ガスを出すこともありません。
空からアクセスできる場所が増えれば、人の移動だけではなく、物流も空へと移り変わっていくでしょう。
そうして空飛ぶクルマが移動交通の一端を担うようになると、これまで地上を少なからず占めていた道路などの交通網スペースに都市の余白が生まれます。そこに別の可能性が生まれ、公園やスポーツ施設、菜園や森がつくられたら、都市の自治機能やQOLの向上につながっていくでしょう。

空飛ぶ未来のスタートを切る

—提案から実装へ—

日建設計では法令づくりのワーキンググループ*にも参加し、検討中の法令案について都市・建築計画視点から最前線で分析しています。安全性や社会受容性、実装年代を鑑みながら、改善点や懸念点を把握し具体的なソリューションやビジョンを提案することで、関係各所とともにワクワクするような未来づくりをリードします。
2023年、国土交通省のバーティポート整備指針の公示によって、都市や建築にバーティポートを設置するための具体的な検討が可能となり、実際の敷地を対象としたプロジェクトにも携わるようになりました。その事例を2つご紹介します。

*国土交通省と経済産業省による『空の移動革命に向けた官民協議会』の離着陸場ワーキンググループ

例1:空飛ぶクルマに関わる人を増やす

空飛ぶクルマは新しい技術です。どんなに便利と分かっていても、知らないものの導入には不安がつきものです。
機体の性能評価に基づく、離着陸場に求められる寸法や構造の割り出し。それらを実際に今の街並みのなかにどう設置すればいいのか。どのように導入すれば使う人たちの生活が楽しく、便利なものにできるのか。
専門性の高い複雑な研究をわかりやすく伝える表現方法についても、検討を重ねてきました。

街並みへの導入検討やバーティポートの寸法など、専門的な内容をわかりやすくビジュアル化。

日常生活と最新技術が融合するバーティポート空間のデザイン

2023年度、『空飛ぶクルマ離着陸場ガイドブック』の作成を大阪府からの委託業務にて行いました。日建設計は、兼松、Skyports、ANA総合研究所とともに、共同事業体の一員として作成に携わっています。

空飛ぶクルマ離着陸場ガイドブック:国土交通省のバーティポート整備指針を分かりやすく解説しています。

例2:次世代型交通結節点 空飛ぶクルマ×既存都市交通施設の融合

日建設計ではこれまで、TOD(駅まち一体開発)や高層ビル、空港施設などを数多く設計してきた経験を活かし、空飛ぶクルマを既存交通網と結節していく施設提案と検証を行ってきました。
2023年度には、Osaka Metroが大阪府・市の補助金公募事業に提案し採択された『Osaka Metro の駅・関連施設と統合された空飛ぶクルマの離着陸場に関する調査』において、共同事業者の兼松、協力事業者Skyportsの支援を行い、バーティポートの施設検討および緊急離着陸場の改修検討を実施しました。

次世代型交通結節点:地下鉄駅やバスなどの駅前交通ターミナルと融合したバーティポートのプロトタイプイメージ。

それぞれの課題や条件に合わせた計画

—陸・海・空を繋ぐバーティポートとネットワークが生む次のソリューションー

環境に合わせた選択ができるバーティポートパターン

時代、地域性、まちづくり、建築計画にあわせたバーティポートを提案し、それらをネットワークさせることで、また新たなソリューションが生まれる。それは私たち日建グループの強みであり、社会の中で担い続けるべき役割だと考えています。

例えば、空飛ぶクルマの初期実装時には、空路の確保のしやすい水辺などがバーティポート設置場所の候補に挙がる可能性があります。それを移動可能な浮体式バーティポートとしてみてはどうでしょう。島国である日本では、陸路よりも水上の空路を選択した方がアクセスしやすい場所が多くあります。

近くて遠い場所、例えば内海によって隔てられた九州と本州を空飛ぶクルマでつなぐケーススタディ。現在の1時間到達圏と、空飛ぶクルマがある場合の比較データ。短時間での移動を実現することはもちろんだが、それだけの陸路の整備と移動時排出CO2を考えると、空飛ぶクルマが環境にやさしい乗り物であることが実感できる。 ※(出典)日建設計・パシフィックコンサルタンツ共創WG「CROSS OVER」未来のビジョンを語る研究会資料

人口減少が進む地方で課題となっているインフラ整備費の縮退にも空飛ぶクルマは前向きに貢献できると考えます。浮体式や簡易なバーティポートの整備によって、空路による代替可能性が検証できれば、陸路の網羅的なインフラ整備だけではない将来展開が見つかるかもしれません。
島国日本ならではの、空の道でつながる都市の在り方です。

浮体式バーティポートで湾を繋ぐ、空の移動革命のイメージ。陸路では長時間・長距離移動となる場所も、空飛ぶクルマで海を渡れたとしたら、今よりも気軽に孫がおじいちゃんに会いに行けるようになるかもしれない ※

スカイスケープデザインラボ課の発足

~空の移動革命で,地上の社会課題を解決する~

日建設計では、空飛ぶクルマの機運の上昇を重要な社会環境の変化ととらえ、業界の垣根を超えた様々な企業との研究活動やバーティポート設置検討、空飛ぶクルマによって変化するまちづくりの提案を行ってきました。
そして、その未来を、より具体的に、より確実に実現していくために、2024年、新しくスカイスケープデザインラボ課を発足しました。

スカイスケープデザインラボ課の業務スコープイメージ。従来の設計業務に留まらず、空飛ぶクルマの社会実装のためのルールづくりへの参画や導入検討、エネルギー・環境計画も含めたトータルデザインでまちづくりや都市の将来までを考えていきます。

スカイスケープデザインラボ課が目指すのは、「空の移動革命に合わせた都市・建築のデザインで,地上の社会課題を解決すること」です。日建Gの総力と、社外との共創によって多領域に好循環をもたらし、ワクワクする未来を実現することを目指しています。

経済性だけではとらえきれない、地球との共存や新しい豊かさが求められる今、空飛ぶクルマは「社会のために,ワクワクする未来を拓く」ポテンシャルをもっています。 「みんなの空の移動革命」を一緒に考えていきましょう。

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