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建築が動き出した! -さいたまスーパーアリーナ-
さいたまスーパーアリーナ(設計:MAS2000設計室、代表:日建設計)では、総重量15,000tのムービングブロックと呼ばれる構築物が動いています。この15,000tという重量は、乗用車約15,000台分の重量に相当し、あるいは10階建て程度の平均的なオフィスビルの重さに相当します。
9-14 さいたまスーパーアリーナ 平成12年(2000)
写真右下の緑地が、けやき広場。
3日間で10万5,000人が体感した、レディー・ガガのコンサート
ところが、このような大規模イベントは1年を通じて頻繁に行われるわけではありません。大半のイベントは、5,000人程度の収容人数のイベントホールで充分です。逆に大き過ぎるホールでは、臨場感のあるイベントとすることには無理があり、主催者側としても観客数に相応しい大きさのイベントホールを求めることとなります。
さいたまスーパーアリーナでは、その要望に応えるため、ホールの大きさと客席数を変えることを、客席を支える大きな構造物を動かすことで実現しました。この小さくした収容人数5,000席の客席構成は「アリーナモード」と名付けられ、客席を支える大きな構造物は、「ムービングブロック」と名付けられています。コンサートに限らず、バスケットボールやアイススケートなどのイベントにも「アリーナモード」は適しています。
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9-15 アリーナモード(手前:コミュニティアリーナ)
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9-16 アリーナモード時の断面図
配管離接合機構・ダクト離接合機構はアリーナ用に接続されている。 -
9-17 スタジアムモード
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9-18 スタジアムモード時の断面図
配管離接合機構・ダクト離接合機構はスタジアム用に接続されている。
動く15,000トン
このムービングブロックは、64台の台車によって支えられており、制御された20台のモーターで70mの距離を20分で移動できます。スプリンクラーや便所の配管そして空調ダクトは、伸び縮みするわけではなく、スタジアムモードの位置とアリーナモードのそれぞれの位置に、配管やダクトを接合できる仕組みを持っており、そこで離接合できるようになっています。
9-19 ムービングブロック駆動台車
9-20 ムービングブロック配管離接合部
動いた跡のスペースは使えるの?
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9-21 アリーナモード時2階平面図
メインアリーナの右には、コミュニティアリーナが示されている。 -
9-22 アリーナモード時に出現するコミュニティアリーナ
中央の窓の外側には、けやき広場がつながっている。
遮音・遮光している「スタジアムもしくはアリーナ」と、外部空間と一体となって都市的な広場をつくり出している「コミュニティアリーナ」は、対照的な2つのイベント空間となっています。
さいたまスーパーアリーナは、日本でも有数の稼働率の高いホールとなっていますが、同時に「建築が動くこと」による新しい可能性も示しています。
9-23 夕刻のさいたまスーパーアリーナ
さいたまスーパーアリーナ ホームページ
(2000) 『新建築 2000年7月号』新建築社
9-14 撮影:三輪晃久写真研究所
9-19~20 撮影:エスエス東京
9-22~23 撮影:新建築社写真部