夢をかなえるコンピューター

建築デザインにおける新しい挑戦

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モノづくりの環境が大きく変わり始めています。たとえば3Dプリンター。コンピューターで描いた形そのままに、プリンターが造形物をつくってくれます。今はまだ樹脂など限られた材料のモノしかつくれませんが、そのうちデジタルデータさえつくれれば、時間もコストもかけずに、あらゆる材料のモノがプリントアウトの要領でつくれるようになるといわれています。ひとりひとりの体型にぴったり合った洋服も、体をスキャンすることで、簡単につくれるようになるかもしれません。

建築は本当に一品生産か?

ところで、建築はプロジェクト個々の条件に即してつくられる一品生産品だったはずです。しかし現実には、経済的な理由もあり、サッシュやねじなど工場で大量生産品として作られるパーツを多く使っているため、それが足かせとなって、完全に自由に、プロジェクトに最適な形がつくられてきたわけではありません。しかし、コンピューターの中のデータをそのまま形にする技術が充実してくれば、個別のパーツも簡単に一品生産できるので、工業生産品に左右されずに本当に欲しい建築がつくれる日がやって来るはずです。もっと自由に柔軟に建築をつくりたい。クライアントの多種多様なニーズに応えたい。そう考えている日建設計は、今、コンピューターを最大限に活用することで建築デザインの可能性を広げていこうとしています。

多様な要望に応えさらに合理的で革新的なビルが作れるか?

たとえば見た目が革新的で、構造が合理的で、コストが安くて、環境にもいい上に、そこを利用する人がそれぞれに全く違う要望をもったビルを計画することになったとします。これまでは、設計者は模型をつくる、シミュレーションするなど、膨大な時間をかけて、ひとつひとつを個別に検討していました。そこで日建設計は、コンピューターの助けを借りることで、多くの条件をまとめつつも、品質の高いデザインをより少ない時間で創り出す仕組みの開発に取り組んでいます。コンピューターを使えば、人間では不可能な回数のシミュレーションを行い、多くのデザイン案を検討することができるようになり、そこから最適なものを選ぶことが可能になります。そして先ほど説明した3Dプリンターの技術が発展すれば、そのデータをそのまま使って特注の建築パーツを低コストでつくれるようになり、本当に自由に欲しい建築、望まれる建築が実現できるようになると考えます。

コンピュータで人間も建築ももっと自由に

コンピューターがデザイン案を出すというと、無機質で冷たい建築になりそうなイメージがありますが、決してそうではありません。さまざまな条件をまとめて多くの人が求めるものを導くわけですから、人間が頭の中で整理して単純な形をデザインするよりも、もっと、人々に愛される形が提案でき、むしろ人間味あふれるものになるかもしれません。
きっと将来は、たくさんの条件やひとりひとりの要望に最適にデザインされた建築が、今よりもっと無駄なく低コストでつくれるようになるのではないでしょうか。そして難しいことや、面倒で時間がかかることはコンピューターに任せて、人間も建築ももっと自由でクリエイティブになれるのではないでしょうか。日建設計では、設計者とコンピューターがタッグを組んで、その実現を追求しています。

  • 山梨 知彦

    山梨 知彦

    チーフデザインオフィサー
    常務執行役員

    1986年、東京大学修士課程を経て日建設計に入社。専門は建築意匠。2009年「木材会館」にてMIPIM Asia's Special Jury Award 、2014年「NBF大崎ビル(ソニーシティ大崎)」2019年「桐朋学園大学調布キャンパス1号館」にて日本建築学会賞(作品)、2011年「ホキ美術館」にてJIA建築大賞、「NBF大崎ビル」でCTBUH Innovation Award などを受賞。日本建築学会賞、グッドデザイン賞、東京建築賞などの審査員も務めている。日本建築家協会、日本建築学会会員。

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