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2019年日本建築学会賞(作品)に、山梨知彦、向野聡彦が選定されました。(桐朋学園大学音楽学部 調布キャンパス1号館)

2019年日本建築学会賞(作品)に、弊社 山梨知彦、向野聡彦が選定されました(桐朋学園大学音楽学部 調布キャンパス1号館)。
弊社にとって大変光栄なことと受け止めております。関係者の皆様に感謝いたしますとともに、今後一層、魅力のある作品づくりに努力いたします。

<選定理由>(日本建築学会選評より)
調布駅から程近い住宅地に佇む名門音大のキャンパスである。典型的な郊外の住宅地に音楽大学という大型建築を埋め込むために施された様々な工夫が、そのままこの建築の形となり、建築に説得力を与えている。まず周辺の住宅にスケールを合わせるため地上2 階地下1階で計画されている。大きさや高さが異なるレッスン室が2階にフレキシブルに配置され、レッスン室とレッスン室の間には坪庭をはさみこんでいる。それにより遮音の問題を解決しながら、廊下に採光と通風をもたらしている。
坪庭で分節されたキャンパスは集落のような景観を呈している。遮音のためにRC造となっているが、外壁はコストを抑えるために普通型枠の打ち放し。木目がコンクリートに転写され、土壁のような味わいを与えている。レッスン室の大きさは、既存施設の詳細なリサーチから割り出され、その配置も時間割の分析から割り出されている。音大のプログラムそのものから形を導いているので、そこには均等スパンや通り芯といった作り手の論理から導き出された概念は存在しない。レッスン室の間の廊下も決してまっすぐではなく、広くなったり狭くなったりしながら、常に視線が奥へと抜けるように配慮されている。廊下には学生が溜まりたくなるような広めのベンチも設えてある。廊下からはレッスン中の学生の姿も垣間見えるようになっており、お互いに刺激を受けられる空間となっている。 地階には、アンサンブルに使えるような比較的大きなレッスン室と打楽器のようなより高い遮音性が必要とされる楽器のためのレッスン室が配置されている。地下ではあるが、サンクンガーデンから光が注ぎ、緑も垣間見えるので地下であることを感じさせない。1 階のピロティは学生にとってキャンパスとなる自由な空間として計画されている。大きさも配置もバラバラな2階と地階のレッスン室を構造的に繋げるべく、1 階の柱はBIM を使って2階と地階の梁の交点に配置された。RC を充填した250角の鋼管柱が内外に連続し、見通しのいいキャンパスを形成している。天井は不均質なグリッドを構成する梁があらわしになり、深みのある天井になっている。窓際には広めのベンチが設えられ、楽器を置いて窓際でくつろげる場を提供している。
この建築には無駄なものが一切無い。コスト的にも厳しかったことを山梨氏は強調されていたが不要なものを極限まで削ぎ落とし、音大というプログラムを最大限に生かし、全てが必然に感じさせるデザインに仕上がっている。非常に無機質な空間でありながら、光に溢れ音大生の創造力を最大限刺激するような豊かな空間が実現されている。遮音を気にするあまり、監獄のようになりがちな音大のあり方に一石を投じていると言えよう。
「NBF 大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」の独創的な環境建築で見せた山梨氏の執拗さは、ここでさらに結実し、音大のキャンパスの原型ともなるべき作品を作り上げた。 よって、ここに日本建築学会賞を贈るものである。

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