コストマネジメントレポート
2020年1月号を掲載しました。
「2020年の民間建設投資は減少(昨年比)
価格競争激化により建設物価は緩やかな下落基調」
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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。
※本レポートは情報提供を目的として日建設計エンジニアリング部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。
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2020年の民間建設投資は減少(昨年比)
価格競争激化により建設物価は緩やかな下落基調
民間企業設備投資が減速 建築着工床面積が減少
2020年度の実質GDP成長率は潜在成長率を下回る低成長が続くと予測(日本経済研究センター)されており、成長の下振れ局面にある。業況判断DIも9月調査の+8から+4と悪化しており先行きも0と、さらなる悪化が見込まれている(図1)。民間企業設備投資は既に高水準にあるため今後調整圧力は相当に強く、20年度は大幅に下振れる可能性がある(日本経済研究センター)。建築着工床面積(民間非住宅)も18・19年度と既に減少が続いている(図2)。政府は19年度補正予算の経済対策を閣議決定しているものの、20年の民間建設投資は漸減し、価格競争激化により建設物価は緩やかな下落基調が続くと見込む。
※業況判断DI:日本銀行の企業短期経済観測調査(日銀短観)で発表される景気の判断指数で、「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたもの。
※業況判断DI:日本銀行の企業短期経済観測調査(日銀短観)で発表される景気の判断指数で、「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたもの。
2019年度上期の建築受注の出足に遅れ
2019年度上期(4-10月期)の建築受注目標達成率*は、過去4年と比べ出足の遅れがみられる(図3)。大手建設会社の達成率は、2019年1-3月期の大型受注を見越して上期の受注を抑えていた前年度より増加したが、大林組を除く3社は、2015~2017年度と比べ低い水準にある。準大手についても、過去4年と比べ低い水準であり、下期以降従前同等以上に受注意欲が高まる可能性がある。
*受注目標達成率:受注高の期首目標額に対する実績額の割合
*受注目標達成率:受注高の期首目標額に対する実績額の割合
特命受注から競争受注へ
2014年以降、旺盛な建設投資の影響により建設会社の特命受注比率は増加して競争受注比率が減少していたが、2016年以降は競争受注比率が増加傾向にある。2018年度は2014年以前の水準に達しており、民間建設投資の減少により今後も競争受注比率は高まると考えられる(図4)。その影響により建設物価に下落圧力がかかり、建設物価の緩やかな下落基調が続くと見込む。
首都圏:建築・設備とも緩やかな下落基調
関西圏:上昇は一服 東海圏:緩やかな下落基調
日建設計標準建設費指数”NSBPI”とは
日建設計では、独自に開発した建設物価の値動きを示す指数「日建設計標準建設費指数”NSBPI”」を用いて分析を行っている。
日建設計標準建設費指数とは、標準賃貸オフィスを数量モデルとして、独自調査による実勢価格をタイムリーに反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
2002年を100とし、第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。
日建設計標準建設費指数とは、標準賃貸オフィスを数量モデルとして、独自調査による実勢価格をタイムリーに反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
2002年を100とし、第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。
工事価格の推移
首都圏:建築仕上工事の一部と設備工事の労務費や機器価格が下落。ダクト工事費は上昇したが影響は小さく、全体では下落。
関西圏:先期までの上昇基調は足元で一服。一部の案件での設備工事費が下落傾向にあるが全体ではほぼ横ばい。
東海圏:前期からの下落幅は縮小するも(前期比-0.5pt→-0.3pt)、建築・設備工事ともに緩やかな下落傾向は継続。
関西圏:先期までの上昇基調は足元で一服。一部の案件での設備工事費が下落傾向にあるが全体ではほぼ横ばい。
東海圏:前期からの下落幅は縮小するも(前期比-0.5pt→-0.3pt)、建築・設備工事ともに緩やかな下落傾向は継続。
鉄骨需要減少により緩やかな価格下落傾向
鉄骨需要は2017年度をピークに2018年度以降減少傾向。需要の減少は、需給が逼迫していたファブの生産状況改善やBCP材などの鋼材や高力ボルトの納期改善につながっている。20年以降も需要の減少が続けば、鉄骨材工価格の下落圧力は強まると考える。
設備労務費・機器価格 専門工事費が下落
設備工事(電気・空調・衛生)は、労務費、一部の機器・専門工事を中心に下落。専門工事の中では、これまで高止まりしていた消火設備に下落がみられる。