8-4 
全社一元化の組織デザインとグループ経営

 1990年代から21世紀初頭にかけて、日本では二つの大きな変化が加速度を増して起きています。一つは東京一極集中で、政治・経済・文化など、社会資本・人材・活動が首都圏に集中化しています。もう一つは、社会経済・技術・文化の高度化・多様化です。この大きな2つの変化には様々な問題や課題があるものの、とどまる様子はありません。
 建築・都市・環境における価値づくりに取り組む日建設計では、この日本を取り巻く大きな変化に対応するため、自らの組織をデザイン変更する決断をしました。それが日建設計の全社一元化と、日建グループとしてのグループ経営です。

日建設計の全社一元化

 世界の都市人口統計には色々なものがありますが、概して言えることは、東京首都圏人口が世界でも群を抜いて多いことです。2013年の調査では、東京首都圏人口約3,300万人に対し、2位のジャカルタ、3位のソウルで2,500万人前後、欧米で最大のニューヨークは約2,100万人となっています。東京一極集中には、大地震などのリスクへの脆弱性や首都圏以外の日本各地の衰退など様々な問題があるものの、今では企業経営など経済活動においては首都圏への集中を避けることは難しい状況です。
 日建設計においても、東京・大阪・名古屋・九州のオフィスの中で、東京オフィスの活動規模が群を抜くこととなり、発祥以来大阪にあった本店登記を2004年に東京へ移転しました。日建設計工務の設立から54年目、臨時建築部の設立から104年目のことでした。

 21世紀初頭のもう一つの大きな変化が、様々な領域・分野における高度多様化です。その変化に対応しようとしたのが、2004年の日建設計の全社一元化でした。それまでの日建設計は、東京・大阪・名古屋の地区ごとに運営する傾向があり、それぞれの地区で設計・監理・都市計画等の各部門が連携し、ある程度独立的に運営する方式を採っていました。  
 しかし、日本の様々な社会制度や技術が多様に高度化する状況に対応するため、知的資源・人的資源を全社で一元化し、それぞれのプロジェクトに最適のチームを組むことが出来る体制に、全社の組織デザインを変更しました。今では、海外プロジェクトも全社で最適のチームを組めるようになり、従来の地区に捉われない運営となっています。

8-26 全社一元化体制への組織変更 平成16年(2004)

日建グループとしてのグループ経営

8-27 日建グループ図(2014年現在)

 「我々(日建設計)は何者か?」「我々はどこへ行くのか?」と自らに問うた1992年の社内レポートでは、「社会環境デザインの先端を拓く専門家集団」という明快なビジョンが立てられていました(第7回配信)。そのレポートでは3つの目標を掲げており、「デザインサービスの領域拡大と高度化」という目標が第1番目に挙げられています。その後、日本の多様化・高度化する社会の中で、建築・都市・環境をどのようにつくってゆくかハードとソフトの両面からコンサルタントとして貢献できる企業グループとなるため、2006年までに日建設計と7社のグループ会社から成る日建グループを立ち上げてきました。今では、日建グループの活動は国内に留まることなく海外にも展開しています。

  • 1956年に誕生した北海道日建設計(HNS)は、寒冷地における建築と都市づくりの技術を基礎に、北海道の人々と風土に根差した環境づくりを続けてきています。
  • 1970年に設立された日建ハウジングシステム(NHS)は、人々が集まって住む施設づくりに多くの実績を積み重ねてきています。
  • 1994年に設立された日建スペースデザイン(NSD)は、インテリアデザインの幅広い分野で活躍する70余名のデザイナーやクリエイターを擁する個性豊かなプロフェッショナル集団です。
  • 2001年には、日建設計シビル(NSC)が日建設計の土木部門を継承して分社独立しました。土木技術を基礎に都市基盤施設整備や都市計画の分野で、国内のみならず中国やベトナムなど海外でも活躍しています。
  • 同じく2001年日建設計マネジメントソリューションズ(NMS)が設立され、企業の保有する不動産資産の価値を最大化することや、オフィスワーカーの多様なワークスタイルから知的生産性を高めるコンサルティング業務を続けています。
  • 2005年には、日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)が設立されました。建設プロジェクトの仕組みの複雑化や、意思決定プロセスの透明化へのニーズの高まりを背景に、建設プロジェクトの事業主の支援を行う専門家として日本最大のコンストラクション・マネジメント会社となっています。
  • そして2006年日建設計総合研究所(NSRI)が、「持続可能な社会の構築」を活動目標に掲げ設立されました。都市デザインと環境に関するエンジニアリングを融合するコンサルティング業務を続けており、国内での官民からの委託に応えるのみならず、中国やベトナムなど海外でも活躍しています。

8-28 日建グループ(2014年現在)

(参考文献)
Wikipedia 「世界の都市圏人口の順位」

当サイトでは、クッキー(Cookie)を使用しています。このウェブサイトを引き続き使用することにより、お客様はクッキーの使用に同意するものとします。Our policy.