10-3
サステナブルな都市を求めて
-中国天津于家堡金融地区開発と東京ミッドタウン-
1965年頃の子供たちが用いていた社会科の教科書には、「私たちの住んでいるこの地球の総人口は、約35億人です」と書かれていました。その46年後の2011年に、「国連の発表によれば、世界人口は70億人を突破した」との報道がなされました。半世紀足らずの間に、世界総人口が2倍になったのです。国連は、世界人口を年次報告していますが、同時に都市人口の動態予測も行っています。都市に住む人口は、1950年では世界総人口の29%にあたる7億3,200万人、2005年では世界総人口の49%の32億人、そして2030年には世界総人口の60%にあたる49億人となるだろうと予測されています。さらに2050年までには、人類の3分の2にあたる60億人以上の人達が、都市あるいは町に住むだろうとの予測です。都市域におけるサステナブルな計画が、ますます重要になってきています。
中国天津の于家堡金融地区開発
中国では、農村から都市への流入人口を政府が制度的にコントロールしているにもかかわらず、都市への人口集中が止まらない状況にあります。中国における2050年の人口の都市化率は約73%になるという予想もあり、人口の多い中国において、都市化が世界平均を上回る速度で進んでいるようです。世界への負の影響も懸念されるところです。
このような状況の中で日建グループは、中国の国有企業が天津市で進めている都市開発プロジェクトにおいて、「低炭素都市・建築づくり」のコンサルタントとして参画することとなり、現在、環境負荷の低減策を包括的に担当しています。
地域エネルギー・建築エネルギーの消費削減や未利用・再利用エネルギーを活用できる仕組みづくり、生物多様性やクールスポット形成に配慮した緑地づくり、廃棄物回収率を80%以上とすること、CO2排出量の削減など様々な課題に対し、具体的な解決案を組み立てながら進めています。
これらの解決策の組み立てを、気温・気流シミュレーションによる予測にかけたところ、8月の日中で、解決策を導入する以前の計画に比べ気温が約2℃低い範囲を広域に生み出せる結果が出ました。下図はその紹介です。
この世界初となる低炭素CBD(Central Business District:業務中心地区)の実現に向けた試みは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)における「低炭素モデル都市事業」の第一号案件に選定されました。
このような状況の中で日建グループは、中国の国有企業が天津市で進めている都市開発プロジェクトにおいて、「低炭素都市・建築づくり」のコンサルタントとして参画することとなり、現在、環境負荷の低減策を包括的に担当しています。
地域エネルギー・建築エネルギーの消費削減や未利用・再利用エネルギーを活用できる仕組みづくり、生物多様性やクールスポット形成に配慮した緑地づくり、廃棄物回収率を80%以上とすること、CO2排出量の削減など様々な課題に対し、具体的な解決案を組み立てながら進めています。
これらの解決策の組み立てを、気温・気流シミュレーションによる予測にかけたところ、8月の日中で、解決策を導入する以前の計画に比べ気温が約2℃低い範囲を広域に生み出せる結果が出ました。下図はその紹介です。
この世界初となる低炭素CBD(Central Business District:業務中心地区)の実現に向けた試みは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)における「低炭素モデル都市事業」の第一号案件に選定されました。
10-12 于家堡(うじゃぷ)金融地区開発
10-13 于家堡金融地区開発の熱環境計画
東京でスマートな都市開発を:東京ミッドタウン
近年の東京では、熱帯夜の日数が増えたことによる熱中症の増加や、都内での局地的な集中豪雨が増えています。緑地が減少し、舗装面や建物面など熱を溜め易い材料の面積が増えたこと、そして自動車や建物などの人工排熱が増えたことが、その主要な原因として挙げられています。
また中小の建物が密集して立ち並び、それぞれの建物が非効率的にエネルギーを消費して排熱エネルギーを無秩序に放出している現状があります。世界的な大都市となった東京には、都市機能の集約化と、大規模な緑地の確保が必要とされています。
また中小の建物が密集して立ち並び、それぞれの建物が非効率的にエネルギーを消費して排熱エネルギーを無秩序に放出している現状があります。世界的な大都市となった東京には、都市機能の集約化と、大規模な緑地の確保が必要とされています。
10-14 東京ミッドタウン 平成19年(2007)
東京ミッドタウンは、10.2haの計画地区に、ショッピングセンター・オフィス・ホテル・美術館・集合住宅などから構成される延床面積56万㎡の集約された都市型複合施設として、2007年にオープンしました。都市機能を集約することにより生み出された大規模緑地は、その冷却効果で、密集する都市域内に大きな気流を生み出しています。この緑地は、青山から六本木を経て赤坂に至るグリーンベルトの重要な一画となり、東京のヒートアイランド化を低減する役割を果たすこととなりました。
エネルギー供給面では、中央で温水・冷水・蒸気などの熱源を一括供給する「地域冷暖房システム」を導入し、様々な工夫で熱の配送ロスを最小化する高効率の熱源システムとしています。また自家発電システムとしてコージェネレーション設備を導入し、電力を供給するとともに、発電時に発生する排熱を冷暖房などの用途に利用することでエネルギーの有効利用を図っています。夜間電力を利用して冷やした水を蓄熱層に蓄え、昼間にその冷やされた水を使う「水蓄熱システム」も採用されました。
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10-15 エネルギー供給エリア
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10-16 時刻別運転パターン
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10-17 冷水蓄熱槽のイメージ図
サステナブルな都市を求める試みを2つ紹介しましたが、より広範にこの課題に取り組むためには、サステナビリティに向けた社会的な意志や、環境を保全する事業のための新しい経済システムの組み立てが必要となるでしょう。そして最近では、多くの人達が「より必要なことは、人々の生き方や価値観のギア・チェンジ」と気づき始めているようです。
(参考文献)
Wikipedia 国連 世界都市化予測報告
三井不動産 東京ミッドタウン ホームページ
山村 真司 (2007)『Nikken Sekkei Quarterly Spring』「都市の緑環境とヒートアイランド」日建設計
森山 修治 (2009)『Nikken Sekkei Quarterly Summer』「集約化による都市機能の高効率化と安全・安心」日建設計
Wikipedia 国連 世界都市化予測報告
三井不動産 東京ミッドタウン ホームページ
山村 真司 (2007)『Nikken Sekkei Quarterly Spring』「都市の緑環境とヒートアイランド」日建設計
森山 修治 (2009)『Nikken Sekkei Quarterly Summer』「集約化による都市機能の高効率化と安全・安心」日建設計
出典
10-12 提供:天津新金融投資有限責任公司
10-14 撮影:川澄・小林研二写真事務所
10-12 提供:天津新金融投資有限責任公司
10-14 撮影:川澄・小林研二写真事務所