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ロシアへ、日本より愛を込めて
—サンクトペテルブルグ “WARM CITY”-
エルミタージュ美術館をはじめとする歴史地区と関連建造物群は世界遺産となっており、白夜が美しい短い夏と厳しく長い冬は、ドストエフスキーをはじめとするロシア文学やチャイコフスキー等のロシア音楽などの芸術を育みました。ネヴァ川の河口デルタに位置し、運河が網のように巡るサンクトペテルブルグの街は、「ピーテル」の愛称でロシアの人々の誇りとなっています。
11-9 バルト海東端のフィンランド湾に面するサンクトペテルブルグ大都市圏。丸印が歴史地区建造物群のある中心市街地。
赤印がWARM CITY。赤の点線はアプローチルート。
“WARM CITY”の骨格が出来るまで
フィンランド湾の東端を取り囲んで、弓形の市域を環状道路が巡っており、その北辺道路がフィンランド湾に出たところに、サンクトペテルブルク大都市圏の新都心となる”WARM CITY”が計画されています。この地域は、市の中心地から北西約20kmの位置にあり、現在は伝統的なリゾート地区です。
多様な都市機能を持つこの新都市は、湿原状の海面を南北に長く埋め立てて計画されており、居住人口約5万人、ビジネス・観光などによる日単位の訪問客人口約3万人が想定されています。また、この新都市全体に、新しいライフスタイルの快適さと観光リゾート地としての魅力を実現するため、様々な先端的都市開発手法が盛り込まれました。
11-10 リゾート型多機能複合都市”WARM CITY”の中心部となる、大運河をシンボルとしたフェスティバル・コア。
夏期は、エルミタージュ美術館付近にあるウォータープラザからスピードボートでアプローチできる。
11-11 “WARM CITY” マスタープラン(右側が北)
大運河を中心軸とする新しいリゾート都市は、フィンランド湾に向けて飛び立つ鳥のような形をしている。
凍えるピーテルを暖めろ!
11-12 地階の歩行者ネットワークには、主要な箇所でサンクンガーデンが設けられ、自然光に面して日常食品店やレストランが設置される。地上では、環境負荷の少ない都市交通システム(LRT)が走っており、図の左右に見られるように駐車場も地下に設けられている。
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11-13 冬季、地熱を利用して暖房するシステム
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11-14 夏季、地熱を利用して冷房するシステム
ロシアの大地が育んできた文学・音楽・バレエ・美術・演劇・建築などの芸術に端的に顕れるロシア文化。その文化に誇りを持つロシアの人々への敬意が、日建設計のロシアプロジェクトチームの原点になっています。
一方、ロシアでの日建設計への知名度も徐々に高まってきました。モスクワでも複数のプロジェクトが進められており、ロシア中央部にあるクラスノヤルスク、モスクワから東に500kmのニジニ・ノヴゴロド等でも都市計画プロジェクトが進行しています。
11-15 自然光の入る地下歩行者ネットワークは、それぞれの建物に組み込まれたガレリアやアトリウム等に繋がっている。その仕組みは、上図では茶色に示されたガレリアやアトリウム、下図の模式図では茶色の部分に示されている。
小町 文雄(2006)『サンクトペテルブルグ よみがえった幻想都市』中公新書
鎌田 慧 (1996)『サンクトペテルブルグ 混沌と幻想の街』NHK出版