Project Flow

姫路市文化コンベンションセンター
アクリエひめじ

#02

3ホール×展示場×会議室の
複合交流拠点を厳選素材でつくる

アクリエひめじは“ 現代の築城 ” をテーマに、大中小3 つのホールと展示場・会議室を有する複合施設。姫路駅から東へ700m、周囲を鉄道に囲まれた敷地の西に公園、東に建築を計画した。駅から近い立地を活かし、新幹線からの見え方にも配慮した特徴的な外観とした。市民に愛されるだけでなく、全国・世界へ発信する施設となることを目指している。

DATA

主用途 ホール・展示場・会議室
所在地 兵庫県姫路市神屋町
敷地面積 36,423.08㎡
規模 28,224.39㎡
最高高さ 34.85m

Challenge

ー厳選した素材でつくるダイナミックな空間ー

Challenge1

文化・産業に触れるよう
散りばめた仕掛け

“現代の築城” をテーマに、3つのホールと展示場・会議室を有する複合施設。大小ホール・スタジオは防振遮音構造を採用した静音設計としている。多目的なホールでありながら、音楽コンサートも十分に対応可能な豊かな響きを煉瓦という材料で実現させた。また展示場と屋外展示場がガラスを通じて繋がる、透明な設えとするなど、使い勝手と同時に日常的に市民が文化・産業に触れる機会がより多くなる仕掛けを散りばめた。

目線高さを新幹線と合わせた、4 階会議室ロビー。2辺支持ガラスと緑化屋根の向こうに新幹線を望むことができる。

東西方向の2階共用ロビー。PC 天井、コンクリート磨き床、煉瓦壁面と材料を少なく厳選。壁面に一度バウンドした光が煉瓦を照射する。

Challenge2

姫路ならではの「現代の築城」

鉄道に囲まれた敷地を東西に分け、西に公園、東に建築を計画した。建築へは、緑豊かな公園のシークエンスを経て、駅から近い立地と、高性能な建築を活かし、市民に愛されるだけでなく全国・世界へ発信する施設となることを目指している。

Challenge3

静かな静音性を実現

本体鉄骨に防振ゴムを介して、浮間柱を構成するディテールを開発。浮間柱に遮音層を兼ねる煉瓦や、GRC(グラスファイバー入りコンクリート) の音響反射庇を取り付けることで、施工が難解な防振遮音層を、少ないディテールで実現している。

Challenge4

音響にも寄与する特殊な煉瓦積み

中ホールは、煉瓦で3次元的にねじれた曲面を構成することで、ホール内部でのロングスパンエコーの低減を図り、内部での音の攪拌を実現している。また小ホールでは同様の理由で、四方の壁を5 度角度を傾けている。

Timeline History

ーアクリエひめじ 設計プロセスー

2017

プロポーザル当選!

●がらんどうの敷地を見学

4haを超える広大な敷地で新幹線等の高架に挟まれた立地であり、ホールをつくる音環境としては、とても難しい場所となっていた。

設計スタート〜基本設計見直し

●基本設計から配置を変更

⽩鷺が⽻を広げたようなスレンダーな列柱による外観と、丘を登っていく公園設計のイメージを固めていった。

●煉瓦の積み方

様々なパターンの積み⽅を検討。ルールを持たせ、2.7mグリッドで元通りになりながら、いかにランダムネスを実現するかに尽⼒した。

●共用ロビーのうねる壁・・・コストの壁により断念

実施設計

2018

●遮音検討

遮音ラインの確認と、遮音ラインを形成する壁種類の整理を各階にわたり実施。必要な性能を担保するため、多くの時間を費やして検討していく。

●素材の決定

煉瓦の積み方は様々なパターンを検討し、色むらのバリエーションを工場で確認。鉄骨からの支持のディテールを検討した。

●音響検討

永田音響設計さんと協業をしながら、大中ホールそれぞれの音響シミュレーションを実施。反射音の均一な分布のために、必要な室形状の検討を繰り返し実施。

©永田音響設計

成果物提出 コンセプト 視認解析 など

東の駐車場側からは、天守閣の様にみえたり、城郭の石垣を模した煉瓦、白鷺の様に羽を広げた外観、姫路市のマークから着想を得た円弧のモチーフなど姫路ならではのモチーフをたくさん使って設計。

視認解析には、スタジアム設計における考え方を応用し、各席ごとの舞台上の見え方を分布図に表現して確認を繰り返しチェック。検討の結果、アクリエの座席はとても見やすく、見切り席がまったくないという評価をうけている。

実施図面とりまとめ

コンセプトに沿ったプランと模型を作成し提出。播但線と、山陽新幹線+本線に囲われた敷地との呼応や、公園との一体的などのデザインをうまく表した。また全館避難安全検証(ルートC) で大臣認定を所得。

工事着工

2019

●遮音検討

煉瓦による防振遮音構造を実現するために「浮間柱」という部材を考案した。煉瓦壁や音響庇、音響設備をすべて浮間柱で支えることで防振ゴムを集中配置し、コスト・設置手間を削減。

●各所スケッチでの現場確認

細かなおさまりについては内容を精査する為、再度現場にてスケッチを繰り返し、当初の設計内容とすり合わせて日々検討を続ける。

●各種材料検査

フローリングには素材感のみならず、メンテナンスを考慮した塗材を選定。ホール床板は、設置しながらたわみを確認。防振遮音構造同士をつなぐことで、揺れとたわみを解消した。

●姫路ならではの要素

姫路城が築城された1609年10月の空を再現し、大ホールの天井伏図に重ねた。鉄骨など照明が設置できない位置を割り出し、輝度の高い星には明るい光源を当てはめた星空照明天井としている。

●各種検査

演出用のライトアップや大ホールの“懸垂自走式” 音響反射板などを検査。音の響き方を確認していく。

2021

着工より29ヶ月を経て無事竣工!

●竣工後

1周年記念イベント「アクリエみらいラボ」が開催され、日建設計はこどもむけの「つくってくみたててみるワークショップ」を出展。 その他、様々な催しが開催されている。